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琉球新報

戦後70年・平和へ誓い 沖縄全戦没者追悼式2015624

沖縄は23日、沖縄戦から70年の節目となる年の「慰霊の日」を迎え、20万人を超える戦没者を追悼する「沖縄全戦没者追悼式」(県、県議会主催)が、糸満市摩文仁の平和祈念公園で執り行われた。公園にある「平和の礎(いしじ)」には、70年を経ても癒えぬ悲しみを抱えた多くの遺族らが訪れた。各地の慰霊塔でも慰霊祭などが行われ、県内は鎮魂と不戦の祈りに包まれた。追悼式では、いまなお米軍専用施設の73・8%が県内に集中する不条理に対し、翁長雄志知事が「米軍基地問題は国民全体で負担すべきだ」と訴えた。
 

追悼式には5400人(主催者発表)が参加した。正午の時報に合わせて1分間の黙とうをささげた。翁長知事は昨年12月の就任後初めての平和宣言を行い、沖縄戦を教訓に恒久平和への誓いを表明した。焦点となっている米軍普天間飛行場の名護市辺野古沖への移設問題については、政府に「作業中止を決断すべきだ」と訴え、沖縄の基地負担軽減を強く求めた。
 

追悼式には安倍晋三首相や関係閣僚をはじめ、大島理森衆院議長、山崎正昭参院議長らが参列。昨年に続き、ケネディ米駐日大使も出席した。
 翁長知事の就任後、初めて来県した安倍首相は「筆舌に尽くしがたい苦難の歴史を経て、今を生きる私たちが、平和と、安全と、自由と、繁栄を享受していることをあらためて、かみしめたい」とあいさつ。一方で、政府が強行する辺野古の新基地建設計画については触れず、参列した県民からやじが飛ぶ場面も見られた。
 喜納昌春県議会議長は、米軍基地から波及するさまざまな問題に触れ「差別的な過重があり、戦後処理の真っただ中にある」と訴えた。県遺族連合会の照屋苗子会長は「戦争につながる基地建設に断固反対する」と強調した。
 平和の礎は建立から20年。ことし87人が追加刻銘され、刻銘者数は24万1336人となった。

翁長知事の平和宣言(全文)2015623 15:42

 70年目の6月23日を迎えました。
 私たちの郷土沖縄では、かつて、史上稀(まれ)に見る熾烈(しれつ)な地上戦が行われました。20万人余りの尊い命が犠牲となり、家族や友人など愛する人々を失った悲しみを、私たちは永遠に忘れることができません。
 それは、私たち沖縄県民が、その目や耳、肌に戦(いくさ)のもたらす悲惨さを鮮明に記憶しているからであり、戦争の犠牲になられた方々の安らかであることを心から願い、恒久平和を切望しているからです。
 戦後、私たちは、この思いを忘れることなく、復興と発展の道を力強く歩んでまいりました。
 しかしながら、国土面積の0・6パーセントにすぎない本県に、日米安全保障体制を担う米軍専用施設の73・8パーセントが集中し、依然として過重な基地負担が県民生活や本県の振興開発に様々な影響を与え続けています。米軍再編に基づく普天間飛行場の辺野古への移設をはじめ、嘉手納飛行場より南の米軍基地の整理縮小がなされても、専用施設面積の全国に占める割合はわずか0・7パーセントしか縮小されず、返還時期も含め、基地負担の軽減とはほど遠いものであります。
 沖縄の米軍基地問題は、我が国の安全保障の問題であり、国民全体で負担すべき重要な課題であります。
 特に、普天間飛行場の辺野古移設については、昨年の選挙で反対の民意が示されており、辺野古に新基地を建設することは困難であります。
 そもそも、私たち県民の思いとは全く別に、強制接収された世界一危険といわれる普天間飛行場の固定化は許されず、「その危険性除去のため辺野古に移設する」、「嫌なら沖縄が代替案を出しなさい」との考えは、到底県民には許容できるものではありません。
 国民の自由、平等、人権、民主主義が等しく保障されずして、平和の礎(いしずえ)を築くことはできないのです。
 政府においては、固定観念に縛られず、普天間基地を辺野古へ移設する作業の中止を決断され、沖縄の基地負担を軽減する政策を再度見直されることを強く求めます。
 一方、私たちを取り巻く世界情勢は、地域紛争やテロ、差別や貧困がもととなり、多くの人が命を落としたり、人間としての尊厳が蹂躙(じゅうりん)されるなど悲劇が今なお繰り返されています。
 このような現実にしっかりと向き合い、平和を脅かす様々な問題を解決するには、一人一人が積極的に平和を求める強い意志を持つことが重要であります。
 戦後70年を迎え、アジアの国々をつなぐ架け橋として活躍した先人達の「万国津梁」の精神を胸に刻み、これからも私たちは、アジア・太平洋地域の発展と、平和の実現に向けて努力してまいります。
 未来を担う子や孫のために、誇りある豊かさを創りあげ、時を超えて、いつまでも子ども達の笑顔が絶えない豊かな沖縄を目指します。
 慰霊の日に当たり、戦没者のみ霊(たま)に心から哀悼の誠を捧(ささ)げるとともに、沖縄が恒久平和の発信地として輝かしい未来の構築に向けて、全力で取り組んでいく決意をここに宣言します。
  

                       2015年6月23日
                         沖縄県知事 翁長雄志