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特別寄稿                                 

《子どもと教科書狛江の会》世話人和田哲子さんからご寄稿いただきました。ぜひお読みください。

125日の辻村とも子議員の一般質問を聞いて「子どもと教科書狛江の会」は教育委員会に申し入れ書を提出しました。ご注目お願いします。


20161219

狛江市教育委員会
教育委員長   佐藤 正志様
委員長職務代理 熊谷 勝仁様
委員      千葉 眞理様
委員      鈴木 晃子様
教育長     有馬 守一様

申し入れ書

 去る201634日付で今後の教科書採択のあり方について申し入れを致しましたが先日125日に市議会で辻村とも子議員が教科書採択について一般質問を行ったのを見て心配になり改めてお願いを申し上げます。

 2014年の小学校の音楽および2015年の中学校の地図の採択において、判断に迷われた教育委員さんから、説明のために参加していた選定協議会の会長さんに学校での使い勝手について質問があり、その返答も踏まえて他の委員さんも合意の上で学校での使用上の便宜を考慮した決定をしたことがありました。  

この決定について辻村議員は、文科省の通知に抵触するものではないかと尋ねておりました。また教科書採択は教育委員だけが行うもので他のもの (特に教員をさしているようでした) が関わってはいけないはずだとまで言っていました。しかしこれはとんでもない言いがかりです。

文科省の通知 (平成2747) は「教科書の調査研究については、必要な専門性を有し、公正・公平に教科書の調査研究を行うことのできる調査員等を選任し、各教科ごとに適切な数配置するなど体制の充実を図るとともに、調査員等が作成する資料については、教育委員会その他の採択権者の判断に資するよう一層充実したものとなるよう努めること。・・・・」とあり専門性を有する調査員 (狛江市の場合調査研究委員会がそれに該当します) の調査が前提になっているのです。その上で「当該評定に拘束力があるかのような取扱いはしないこと。」となっていますが、辻村議員の質問の例は教育委員さんの方から選定協議会の会長さんに意見を求めたもので、しかも私も傍聴していましたが会長さんはどちらもたいそう抑制的なお答えをしていらっしゃいました。「文科省の通知に抵触する」などというのにはまったく当てはまりません。

 教育長さんは狛江市の規側・実施要綱に基づいてきちんとやっていることを答弁していらっしゃいましたので安心致しましたが、学習指導要領が改訂され、教育委員会も新制度に切り替わる平成31年・32年の採択についてはどう対応するかについて検討中、というご発言もあり、改めて現在の規則・実施要綱を守り通して下さることをお願い申し上げる次第です。

 

 そもそも戦後、それまでの国定教科書制度への反省から検定教科書制度へと変わり、1963年に無償措置法と抱き合わせで広域採択が行われるまで教科書は各学校ごとに選んで使用されていました。当時を知る先生方からは「それが何よりの教材研究になった、自分たちが使うものだから子どもたちの反応も考えながら真剣に選んだ、採択しなかった教科書からもよい部分は積極的に活用するなどとても力になった」と聞いています。そういう経過と実績がありますから広域採択になってからも各学校からの希望を順位をつけて提出してその中で一番希望が多いものを採択するということが行われていました。

しかしこの採択に大きな混乱を持ち込んだのは2000年に中学校社会科歴史・公民に参入した「新しい歴史教科書をつくる会」でした。検定中に白表紙本をかなりな数配布して宣伝を始めたのですが、あまりにもずさんで間違いも多いものだったので批判がわき起こり、結局採択数はわずかにとどまりました。  

その教訓に懲りたのか「つくる会」は地方議会や国会に働きかけて「教育委員会の責任で採択する」ことを強く徹底させることを求めました。そこから採択への現場の意向を排除する動きが強まったのです。狛江市でも次々に要綱が変更され順位づけや絞り込みは行われなくなりました。それでも各学校からの調査研究資料、教科別調査研究資料、市民アンケートなどを踏まえた選定協議会資料が作成されて教育委員さんの判断材料とされ、採択のための教育委員会では協議会会長・副会長さんの説明も受けられることになっている現在の制度はせめて現場の意向を尊重しようとする大変貴重なものだと思います。教育委員さんもそのことを理解なさって真摯に真剣に取り組んで下さっていると敬意を感じています。ぜひこの手続を壊すことのないように心からお願い申し上げます。実際に子どもたちと一緒に教科書を使って学ぶ先生方の意向に不信感を示し極力排除しようとする一部議員さんの意見になど惑わされないで下さい。

 

このところ「教科書の採択権は教育委員会にある」というのが当然のように通用していますが、実は教科書の採択権の所在を定めた明文の法令は日本にはないのです。

常に根拠としてあげられる「地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条」は「教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務で、次に掲げるものを管理し、及び執行する」とあって、その第6項に「教科書その他の教材の取扱いに関すること」が含まれています。これは素直に読めばあくまでも事務処理を定めているものであって教科書の内容に立ち入って選択することまで認めているものではないと思われます。

一方「学校教育法第3711項」は「教諭は、児童の教育をつかさどる」と規定していてこちらの方は主たる教材である教科書を選ぶ権利も義務さえも含んでいるのではないでしょうか。

「教科書を選ぶのは実際にそれを使う先生方」というのは世界の常識なのです。ILO・ユネスコ共同の「教員の地位に関する勧告61 (1966) でも「・・・教員は教材の選択及び使用、教科書の選択並びに教育方法の適用にあたって・・・主要な役割が与えられるものとする」とされています。日本でも「行政改革委員会」が近い将来教科書採択が義務教育においても学校単位で行われるべき旨を提言し (1997) 度々閣議決定もされてきました。これからも実現を求め続けていく必要があります。

子どもたちと一緒に実際に教科書を使う当事者の先生方から教科書を引き離すようなことをして充実した教育ができるわけがありません。

少なくとも現在の狛江市の教科書採択に関する規則・実施要綱を後退させるようなことはあってはならないことと思います。ぜひ堅持して下さいますよう心から申し入れ致します。

子どもと教科書狛江の会

    世話人 和田哲子

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