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狛江市議会
「日本政府は核兵器禁止条約に署名を」

             資料2 陳述書 (2017年9月14日提出)
増田 善信

陳述書

                   20171030日 増田 善信

 

私は和泉本町2丁目に住む増田善信と申します。本日は陳述をお許しいただきありがとうございます。先ず、市議会議員の皆さんが日ごろから狛江市民の福祉と教育などをはじめ、地方自治向上のためにご尽力くださっていることに御礼を申し上げます。

さて本日、陳情申し上げることは「日本政府が核兵器禁止条約に調印するよう求める意見書」を提出していただきたいことです。皆さん既にご存じだと思いますが、今年7月7日、国連で核兵器禁止条約が122カ国の賛成で採択されました。広島と長崎にアメリカが原子爆弾を投下してから72年、被爆者を先頭に多くの人々が核兵器の廃絶を求めて長年にわたって運動してきました。私ごとで失礼ですが、私が核兵器禁止運動を始めたのは1950年のストックホルム・アピールの署名運動からで、1954年3月1日のビキニ水爆実験の後に杉並から全国に拡がった原水禁運動、1984年の核の冬の研究、1986年から3年ほどかけて行った広島原爆後の黒い雨の再調査などで被爆者運動にも参加してきました。さらに1986年から非核の政府を求める会に参加し、現在も非核の政府を求める会の常任世話人を務め、狛江平和委員会と一緒に、毎年3月、中央公民館の集いで開いている原爆展と、東京大空襲展の責任者もしています。

それでは今回の核兵器禁止条約がどのようにしてつくられたかを簡単に説明させていただきます。実は核兵器の使用を禁止する問題は今回が初めてではないのです。1996年にハーグの国際司法裁判所で核兵器使用が違法かどうかが審議されました。この国際司法裁判所への提訴も日本の被爆者をはじめ、私たち平和・民主団体の運動によるもので、当時の広島・長崎の市長が陳述しました。特に長崎の伊藤一朝市長は原爆で黒焦げになった少年の写真を示して、涙ながらに「この子にどんな罪があるのでしょう。こんな罪もない子どもまで無差別に殺す核兵器を禁止する判決を出してください」と訴えたのです。その結果、「核兵器は一般的には非人道兵器であるから使用は禁止される」という問題は全員一致で可決されたのですが、「国家存亡の時はその限りでない」という項目は賛成・反対が77になり、最終的に裁判長が賛成し、核兵器の使用を禁止することが出来なかったのです。その後も2000年から5年毎にNPT(核拡散防止条約)再検討会議が開かれましたが、核兵器保有国の反対でほとんど前進しませんでした。

そこで、2013年3月にノルウエーのオスロで第1回の核兵器の非人道性に関する国際会議が開かれ、被爆者だけでなく多くの科学者も参加して核兵器の非人道性が徹底的に議論されました。さらに第2回会議が2014年2月にメキシコのナジャリットで、第3回がオーストリアのウィーンで201412月に立て続けに開かれ、核兵器の非人道性が世界の世論になっていったのです。300万筆を超える「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」が国連に届けられました。その集大成が今年の7月7日、国連での核兵器禁止条約に実ったのです。

この条約は、核兵器は破滅的な結末をもたらす非人道的な兵器であり、国連憲章、国際法、国際人道法、国際人権法に反するものであるとして断罪し、「悪の刻印」を押しました。その結果、核兵器は今や不道徳であるだけでなく歴史上初めて明文上も違法なものとなったのです。条約は、核兵器の開発、生産、実験、製造、取得、保有、貯蔵、使用と、その威嚇にいたるまで、核兵器に関わるあらゆる活動を禁止し、「抜け穴」を許さないものになっています。まさに被爆者は勿論、多くの人々が待ち望んでいた条約が出来たのです

ところが残念なことに、日本政府はこの条約が審議された国連の3月の会議にも、7月の会議にも参加せず、まだ署名もしていません。国連の会議で、日本政府が座るべき席に、大きな折り鶴が置かれていて、そこには「もしここにあなたが座っていてくれたら」という言葉が英語で書かれていたそうです。これは今回ノーベル平和賞をもらったICANが置いたものだったそうです。被爆国の政府として恥ずかしいことではないかと思います。

皆さんもご存じのようにダムダム弾から始まって、生物・化学兵器、対人地雷、クラスター爆弾などは非人道的兵器として禁止されています。ところが核兵器は、小型の広島・長崎の原爆でも、熱線と爆風で一瞬にして数万もの人を殺し、放射能による後遺症で被爆者をつくり、死ぬまで被害を与え続けるのです。それだけではありません。大型の水爆を使う核戦争になれば、各地で発生する火災による煙や灰が空を覆って太陽の光が遮られて、地球全体が凍結する「核の冬」が起こり、人類が滅亡するかもしれないのです。すなわち、核兵器は最大の非人道兵器です。

狛江市議会は1982年6月、狛江市平和都市宣言を全会一致で採択しています。同宣言は「狛江市及び狛江市民は、各平和宣言都市と手を結び、核兵器完全禁止・軍縮、全世界の非核武装化に向けて努力することを宣言する」となっています。

市議会議員の皆様におかれましては、どうかこの狛江市平和都市宣言の精神に沿って、日本政府に対し、核兵器禁止条約に署名を求める意見書を提出してくださるようお願いします。因みのこの条約は50カ国が批准して、3か月後に発効することになっており、すでに9月21日には50カ国が署名し、タイなど3カ国は既に批准しているといわれています。どうかこのこともご勘案くださって、意見書を提出していただきたいと思います。これで陳述を終わります。ありがとうございました。