2015年9月

第11回こまえ平和フェスタ2015を終えて

こまえ平和フェスタ2015 実行委員会


資料 こまえ平和フェスタ2015 実行委員会のホームページから編集部責任で転載しました。写真の一部割愛、レイアウトの一部変更をしてありますので、ご承知ください。

2015 年8月2日(日)、狛江エコルマホールにて開催された「第11 回こまえ平和フェスタ2015」には、450 名の方にご来場いただき、ホワイエでの展示企画、また70 名の出演者で舞台企画が取り組まれました。

10 年間続いてきた狛江市との共催が叶わなかった今年は、エコルマホールの予約・準備から参加組織、財政面でも試練の年でした。事後の展示に関しても、これまで市役所ロビーで5日間の展示をしていましたが、今年は中央公民館の一室を借りて、3日間と縮小せざるを得ませんでした。そうした中で、ご来場いただいた市民のみなさんの想い、そして賛同広告や事前協賛金など、物心両面でご協力いただいたみなさんの想いを支えに、成功裏にこまえ平和フェスタを終えることができましたことを、深く御礼申し上げます。

今年のテーマは「いのちの声が聞こえますか 戦後70 年 昔 この町で 今も世界のどこかで」としましたが、決定までの論議の中でも、常に「いのち」という言葉が中心に座っていました。この10 年間扱ってきた内容は、ヒロシマ・ナガサキの原爆被害、東京大空襲、沖縄戦、イラク戦争、そして東日本大震災と福島第一原発事故…。いずれも多くの「いのち」が犠牲になり、危険にさらされ、とりわけ戦争においては「いのち」が軽んじられる。被爆・戦後70 年の節目にあって、「いのち」に目を向け、耳を傾ける平和フェスタを、というのが、実行委員の一致した意見でした。
今回、メイン講演者として登場いただいた児童文学作家の岩崎京子さんは、1922 年・大正11年生まれの、まさに戦前・戦中をその身で体験された方です。
今も自宅を開放しての子ども文庫で子どもたちやその親たちと触れ合う中で、
本に関する話だけではなく、ご自身の戦争体験も話されてきました。今回も、国が戦争に向かう中で、学校で教わることや、社会の空気がだんだん変わっていったこと、東京大空襲のとき世田谷からも東の空が真っ赤に染まっているのが見えたこと、警戒警報鳴りやまぬ中
で仕事が仕事にならなかったことなど、臨場感あふれる巧みな言葉で語ってくださいました。
岩崎さんは、「今の時代が、あの頃に似てきているように思う」と言います。あの激動の時代を過ごした方の言葉は、重いです。また、戦争体験のお話についても、子ども文庫の子どもたちに聞かせると、親御さんから「子どもが怖がってうなされるから、話さないで欲しい」と言われたことに驚きつつも「そうか、表現の方法を考えなければ。子どもの心の中に訴える言い方は…」と、前向きに謙虚に、戦争と平和を語り継ぐ方法を模索する姿は、会場でお話を聞いていた方々の心にも大きな示唆を与えたのではないかと思います。

岩崎京子さんがメイン講演ならば、ぜひ岩崎作品の朗読をと、第一回こまえ平和フェスタでもお力添えをいただいた「劇団民藝」の箕浦康子さんにステージを彩っていただきました。
朗読した作品は、岩崎さんが実際に見聞きした戦争にまつわるお話を、「現代の民話」としてまとめた短編集「火の壁をくぐったヤギ」から、同名の短編「火の壁をくぐったヤギ」。
岐阜県出身の箕浦さんは、作品の語り口である「江戸弁」に苦戦したと感想を語っていましたが、その声の調子、たたずまいに会場みんなが70 年前の空襲の現場にタイムトリップした心地でした。

その想いをさらに補強してくれたのが、まさに東京大空襲をその身で体験された伊藤幸恵さんでした。

伊藤さんは今年、自らも初めて実行委員としてこまえ平和フェスタに関わりながら、その記憶を丁寧に書き起こしてくださいました。同じく実行委員で、毎年「狛江市平和都市宣言」朗読劇の脚本を担当してくれている二階堂まりさんの応援も得て、体験記を完成させました。朗読だけでなく、視覚的にも大空襲を伝えるために、映像も映しながらの舞台は大変好評で、逃げ道を塞いでからの容赦ない絨毯爆撃の中で、伊藤さんがその命を救われたのは、下町の近所づきあいと、そしていく
つものの偶然が重なったこと。知っているつもりでいた東京大空襲の実態を、より深く学ぶことができました。

原爆や大空襲のような大規模なものだけでなく、私たちの住む狛江市をはじめ、多くの町が空襲の被害にあい、情勢が厳しくなる中で、動物たちも戦争の犠牲となりました。
動物と子どもたちを主人公に戦争と平和を描いた、合唱構成「ぞうれっしゃがやってきた」は、2006 年の第2回こまえ平和フェスタ以来、10 年ぶりの再演となりました。狛江ぞうれっしゃ合唱団、調布狛江合唱団、そしてミュージカルCoco~の子どもたち、また市民公募で集まった多くの方たちで構成される「平和フェスタ合唱団」は、5月末から10 回の練習を重ねて本番に臨みました。ピアノだけでなく、トランペット、フルー
ト、カホンと様々な楽器が加わって、厚みのある伴奏に、子ども
たちの力強い声が響き、戦争の理不尽さ、平和の尊さを会場いっぱいに表現しました。「子どもたちの歌に励まされた」「感動で涙が出た」等、嬉しい感想が多々寄せられています。
岩崎京子さんのお話、箕浦康子さんの朗読、伊藤幸恵さんの体験記、そしてぞうれっしゃと、今回はとても統一感のある内容になったのではないかと思います。
戦争がいかに愚かなことか、犠牲になるのは誰なのか。平和な未来を次の世代に手渡すために、私たちはなにをするべきか、舞台企画のひとつひとつが強く問いかけてきました。

狛江市は平和宣言都市です。しかし宣言の内容や、いかに宣言がつくられていったのかを知っている市民は、決して多くはありません。この数年、宣言文を読み上げるだけでなく、そこを深めようと、朗読劇形式で狛江市平和都市宣言を取り上げてきました。
今年も3人の若者が、平和都市宣言成立の過程と、その時代の社会情勢、また現在の情勢も絡めながら、丁寧に語ってくれました。台本を読むだけでなく、本番に向けた練習の中で、若者たち自身が学び、自分たちの言葉として呼びかける平和都市宣言は、毎年新しい感動を与えてくれています。

毎回フィナーレで歌う狛江市の歌「水と緑のまち」、今回はそれに沖縄の踊り「カチャーシー」が加わりました。本来出演を予定していた別のグループが急きょ出られなくなり、日程も差し迫った中で
快く応じていただいた、玉城流喜天の会、宇夫方路琉球舞踊研究所のみなさんは、オープニングの琉球舞踊と、このエンディングにも華を添えていただきました。沖縄は、民間人を巻き込んだ激しい地上戦が行われ、沖縄県民の4 人に1 人が亡くなったと言われています。現在も米軍基地が集中し、基地問題に揺れている沖縄。それを声高に訴
えるのではなく、唄と踊りで伝えてくれました。会場中のみなさんが、70 年前の沖縄と、今の沖縄に思いを馳せていたのではと思います。
フィナーレで「水と緑のまち」からなだれ込むように始まったカチャーシーは、「水と緑のまち」が訴える「あたたかくふれあうまち 明日をひらく文化のまち ともに求めつくろう」を、何よりも体現していたのではないでしょうか。

展示企画では、原爆写真パネルや東京大空襲など、戦争の実相を伝える展示、とりわけ今回は調布市の被爆者・田邉俊三郎さん(故人)が描かれた原爆被害を伝える絵を展示することができました。田邉さんのお話をじかに聞くことはもう叶いませんが、この絵が田邉さんの分身となって語りかけていました。

5年に一回のNPT(核不拡散条約)再検討会議がニューヨークで開かれ、会議の成功を目指すデモンストレーションに参加した調布狛江合唱団のメンバーによる報告展示、フリースクールKOPPIE の貼り絵、平和を願う川柳・俳句・短歌・絵手紙、折り鶴コーナーに加えて、今回は東日本大震災の被災地支援を続けている「ちょんまげ隊」の展示が初参加しました。原発事故以降、避難生活を送っている小島力さん、被災地支援をしている渡辺一枝さんは、昨年のこまえ平和フェスタにご登場いただきましたが、その後の生活や支援活動の報告を寄せていただき、それも展示することができました。被災地に一番必要なのは『忘れていないよ』という心。その想いを伝える展示になりました。
毎年、狛江市中央図書館の協力を得て行ってきた平和図書の展示は、市との共催がなくなったことで図書館の協力も難しくなり、これまで共催ということで本当にたくさんのことができていたのだなと実感しつつも、戦争にまつわる書籍の紹介も、平和フェスタの大切な役割であると、今回は実行委員の蔵書で展示を行いました。熱心にメモを取る人、その場で完読する人など、こうした書籍に出会うきっかけづくりとして貢献しました。
調布市原爆被害者の会・田邉俊三郎 さん(故人)
の絵画を観る来場者 
普天間基地って、狛江市をほとんどおおうんだ!

 今回、市との共催がなくなってしまったことで、今までの10 年間、市と実行委員会で知恵と力を出し合って実施して来たひとつひとつをふり返ることのできた一年でした。同時に、11 回目にして初めて、市や教育委員会、社会福祉協議会から後援という形でご支援をいただきながら、最初から最後まで、自分たちの力で作り上げてきたこまえ平和フェスタでした。それだけに、市長、市議会議長にご来場いただけなかった、11 回目の私たちの成果を見ていただけなかったことはとても残念な気持ちです。

 この数年より来場者を少し減らしてしまいましたが、客席は途中で帰られる方も例年にくらべ大変少なく、集中してステージを観ていただいたことは大きな特徴でした。アンケートも81通寄せていただき、たくさんの励ましもいただきました。市民自身が考え行動する平和事業について、こまえ平和フェスタの果たす役割について、これからも深めていきたいと決意を新たにしています。

来年2016 年は8月14 日(日)を予定しています。今年の結果を改善し、さらに魅力的な企画を立ててまいります。今後もご支援をよろしくお願いいたします。