矢野市長市政方針
 平成21年(西暦2009年)狛江市議会第1回定例会に当たり,新年度に向けた施政方針と,平成21年度狛江市一般会計予算の概要等につき説明申し上げます。

 昨年後半からのアメリカ発の金融危機は日本経済にも波及し,企業やその労働者はもちろん,市民生活にも深刻な影響を与えています。これらは本来国が責任ある経済対策を打ち出し,国民の不安を取り除くことが求められますが,それには定額給付金のような一過性の対策ではなく,雇用の確保や社会保障の充実,消費購買力の拡大など恒久的な政策によって対処すべきであると考えます。
 しかしながらいまだに抜本策が打たれない中で,厳しい現状の打開を目指し,限られた力であっても狛江市でできることは進めようと,既に昨年第4回定例会で特別融資あっせん制度を構築し,これから御審議いただく第7号補正予算案及び新年度予算案においても,事業の前倒しや国・都の補助制度の活用などを含め各種手だてを講じたところです。

 昨年12月に国は平成21年度地方財政対策を発表しましたが,新年度の地方税,地方交付税及び臨時財政対策債などの一般財源総額は前年度比で8,100億円の減となっています。しかし雇用創出や地域の元気回復など地方対策が講じられたため,交付団体ベースでは前年度比3,600億円の増額となりました。
 ただ,地方交付税の原資となる国税の法定分は不況により約2兆6,300億円も減収見込みであることから,その財源は臨時財政対策債の増額発行で対応することとされており,公債費の抑制に努めている狛江市にとっては厳しい事態でしたが,将来的な増大を招かないよう予算編成を進めてきました。
 狛江市は狛江市アクションプランによって財政基盤の確立を進めてまいりましたが,21年度は計画の最終年度となります。これまで一定の成果をおさめることができたのも、議会の御理解と市民の御協力によるものと深く感謝を申し上げます。
 しかし,三位一体の改革により削減された地方交付税等が復元されるわけではなく,当面の危機の回避ができたにすぎません。加えて社会保障関係費の増や今後市税収入の落ち込みなどが想定され,気を緩めることなく行財政改革を継続させることが求められています。
 また,第4次行財政改革大綱とともに新たな基本構想・基本計画の策定に臨む平成21年度は,狛江市の未来を方向づける重要な年度と位置づけており,こうした時期にふさわしい予算案となるよう全庁挙げて努力してまいりました。


 それでは新年度予算案の概要について,数字は概算となりますが説明申し上げます。

 特別会計を含めた予算総額は374億5,800万円,0.2%の増で,そのうち一般会計予算は220億7,700万円,対前年度比5億9,300万円で2.8%の増となりました。
 一般会計の歳入では,市税,地方譲与税は前年度とほぼ同様の額ですが,社会情勢を反映し,利子割交付金,配当割交付金,自動車取得税交付金は大幅な減となりました。地方消費税交付金の増は納付期日の関係によるものです。地方交付税は8億7,500万円,19.4%の減を見込んでおり,都支出金3億200万円の増額は,主に道路整備に伴う市町村土木補助や市町村総合交付金の増によるものです。基金等からの繰入金は7,200万円,49.8%の減額といたしました。市債7億2,000万円の増額は,教育債2億8,200万円,臨時財政対策債3億8,300万円の増を主な要因としております。
 歳出においては,総務費は6.2%の増ですが,主に定年退職者の増加や退職手当組合負担金の負担率変更に伴うもので,民生費0.3%の増は,生活保護費など扶助費の増が要因となっており,衛生費2.3%の増は,妊婦健診の拡充,多摩川衛生組合負担金の増額が主なものです。労働費は4.5%,農業費は14.8%,商工費は0.8%といずれも増額ですが,そのうち農業費の増は市民農園の整備等によるものです。土木費については都市計画道路3・4・16号線(七差路)整備費2億6,900万円の増などで,8.0%の増加となりました。消防費は1.4%の増,教育費は小・中学校既存施設改修工事,市民総合体育館大規模改修などのため10.1%の増となっています。なお,公債費は1.2%の減でございます。
 以上の歳出増に対しては,職員定数削減などにより財源を確保してまいりました。また,実施計画の着実な推進に加え,経済情勢を踏まえながら市民生活にも可能な限り配慮したところでございます。

 次に,平成21年度予算案の主な事業並びに新年度に予定している主な取り組みについて申し上げます。

 まずこの間雇用不安や景気のさらなる後退,消費の低迷といった現在の経済危機に対応しようと,狛江市が実施する生活と営業を守るための緊急対策について全体像をお示しするため,今年度の補正予算で提示した内容も含め説明をいたします。
 既にことし1月より3月までの期限で緊急経済対策として信用保証料並びに利子の全額市負担,返済期間5年以内という事業資金の特別あっせん制度をスタートさせましたが,新年度予算ではこれをさらに継続させてまいります。本日定例会初日に国の定額給付金や子育て応援特別手当支給と連動させて,市内消費の喚起を促すための市内共通商品券の発行と,その市内消費促進イベントに対する補助金支給を提案させていただきました。
 また,狛江市内で最も直撃を受けている建設関連業者への仕事確保策として,新年度予算で住宅リフォーム工事に対する助成事業を立ち上げ,さらに市公共工事の前払い金に関する要綱を改正し,最低限度額の引き下げや対象工期等の短縮など使いやすいものにしてまいります。

 そのほか国や都の事業を活用しながら,公共施設の修繕,児童遊園・都市公園における遊具等の修繕,高齢者や障がい者宅への火災警報器の支給・取りつけに対する助成,放置自転車の撤去作業の強化,市政情報ルームや道路管理支援システムの整備などを通して雇用の創出を図ってまいります。
 20年度補正予算と21年度当初予算を合算いたしますと,総事業費は国の定額給付金給付及び子育て応援特別手当支給事業以外に約9,450万円,そのうち一般財源総額は1,900万円余となる見込みです。新年度においても国や都の制度を活用しながら,必要に応じて緊急対策事業を広げていく考えです。

 続いて予算編成方針で掲げた6つの項目を中心に説明申し上げます。

 「安心して暮らせる街」は市民共通の願いでもあります。まず防災や防犯など安全対策から説明申し上げます。
 学校においては学校耐震支援員を配置し,三小の体育館,和泉小の校舎,二中の渡り廊下については耐震補強工事を,六小の体育館,一中の校舎及び体育館では耐震補強工事の設計を実施してまいります。保育園の耐震診断は2年計画とし,順次耐震診断を実施していく考えです。
 地域においては,災害時に自主的な避難所運営ができるよう避難所ごとの協議会を立ち上げることにいたしましたが,新年度は六小,緑野小,四中で開設する予定です。
 市長会助成事業として家具転倒防止器具の支給・取りつけ,並びに地域活性化・生活対策臨時交付金の事業として火災警報器の支給・取りつけに対する助成措置をそれぞれ講じてまいります。
 また,AEDを全市立保育園,児童館,未設置の全地域センター,市消防団本部車並びに全分団ポンプ車に設置することといたしました。
 防犯面では,市内刑法犯認知件数のさらなる減少を目指して防犯診断事業の推進を図り,また保育園の安全確保のためにオートロックを3園に設置いたします。
 現在都施工で狛江通りの拡幅・歩道整備が進んでいますが,市施工分も緑野小前の市道32号線の歩道延長・拡幅工事費,都市計画道路3・4・4号線の無電柱化を含む築造並びに3・4・16号線(七差路)及び市道34号線整備のための用地取得費,そのほか市道8号線の整備工事等を予算計上するなど交通安全対策に十分留意してまいります。
 さらに20年度に初めて取り組んだ中学生を対象にスタントマンを活用した交通安全教育を本年も継続してまいります。

 市内関連3駅周辺には平日約1,000台の放置自転車がありますが,狛江駅北口に駐輪施設を増設するとともに撤去活動回数もふやし,安全の確保,美観の保持に努めてまいります。
 次に,障がいを持った方々が地域の中で社会参加していくために,あいとぴあセンター内ふれあいサロンの運営に就労支援の視点から補助を増額し,「こまバス」運行に伴う施設送迎バスの暫定運行をさらに延長してまいります。
 障害者自立支援法施行に当たって実施した利用者負担軽減措置を新年度も継続し,福祉作業所等の新法による移行に当たって減額される不足分を新たに支援することといたします。障がい者の移動支援事業も使いやすくするため,制度の見直しを図ります。
 また,市民協働事業提案制度による要支援児童支援ネットワークマップを作成し,適切なサポートを受けられる施設等を紹介するとともに,通常学級に在籍し特別な支援を必要とする児童・生徒に対し支援員を配置し,不登校の児童・生徒に対する心理相談員の派遣日数をふやしてまいります。

 引き続き「子育て一番のまち」づくりを推進するために次世代育成支援地域行動計画の後期計画作成に入ってまいります。
 妊婦健診につきましては,20年度公費助成を2回分から5回分に広げましたが,新年度は14回分まで拡大するとともに対象出産施設を都内から全国へ広げることにいたしました。
 保育園の待機児解消を目指して3月に新たな認証保育所の開設準備を進めていますが,当該保育所においては一時保育,24時間緊急保育も実施する予定です。新年度以降の待機児数を見きわめ,必要な場合には保育所をさらに増設するなど待機児ゼロを追求してまいります。
 なお,保護者から要望のあった児童放課後施設の保育時間延長については,昨年11月学童保育所の受け入れ時間を従来の「17時45分まで」を「18時15分まで」といたしましたが,本年4月より小学生クラブで平日「19時まで」を「20時まで」に,放課後クラブでは「18時まで」を「18時45分まで」とそれぞれ延長をいたします。
 なお,岩戸児童センターでは20年度で増築工事を完了し,小学生クラブの受け入れ定員を38名から50名に増員してまいります。幼稚園児に対しては,国・都制度により保護者負担をさらに軽減いたします。

 10月より小・中学生の医療費助成を拡大し,通院分自己負担200円を除く無料化を実施いたします。
 学校教育の関係では,中学校給食を通年化するとともに,三小の特別活動室等整備及び六小の特別活動室等整備工事の設計,二中体育館改築のための設計,四中のガス管改修・4階普通教室空調機設置・美術用机購入等,教育環境の整備を行います。また,ティーチングアシスタントの回数増を図るとともに,特色ある学校づくりを推進するための支援制度を新しく創設し,学校外部評価は新年度全校で実施いたします。
 三小のフリープレイは22年4月開設の条件整備を進めてまいりますが,これによってフリープレイ事業を全校で展開できるようになります。

 青少年の社会参加を促進するために,20年度は小学生環境サミットと中学生会議を開催し,いずれも好評を得ましたが,21年度は再び子ども議会を実施する予定です。青少年のスポーツ活動の場を広げるために西和泉グランドにフットサル用ゴールポストを配置するとともに,市長会の助成を活用して子どもスポーツ体験事業を実施いたします。

 高齢者の孤独死をなくすための取り組みを強めます。既に昨年10月より電力中央研究所との共同研究として独居高齢者見守りシステムの実証実験に入っていますが,新年度内にこの結果をまとめ実用化に向けて努力を重ねてまいります。安否確認を兼ねる高齢者配食サービスについても,一層の活用を図るために利用回数の条件を緩和します。
 また,見守りネットワーク初め各団体と連携を強め,人的なネットワークの重層的な構築に努めます。
 「こまバス」の運行は昨年11月から始まりましたが,高齢者初め市民がより利用しやすいものとなるよう一定時期に見直しを図ります。
 あきスペースを活用した一休みポイントをさらに増設し,エレベーターのない3階以上に居住する高齢者がデイサービスを利用する際には階段介助を支援するなど,町に出やすい環境整備に努めてまいります。
 健康面からの高齢世代支援策として,肺炎球菌ワクチンの接種に対し新たに助成制度を設け,「うんどう教室」を西河原公園に続き狛江団地藤塚第四児童公園でも展開いたします。
 なお,第4期介護保険事業計画においては,税制改正に伴う激変緩和措置の終了を踏まえ第4段階における軽減措置を新たに設けるとともに,第5段階以上の細分化を図ってまいります。基準月額保険料は従来の額を維持することとし,市内に特別養護老人ホーム増設の検討を次期計画に盛り込むことといたしました。

 魅力ある狛江を築こうと始めた「音楽の街−狛江」づくりは3年目に,「絵手紙発祥の地−狛江」づくりは2年目に入りました。関係者の御尽力でいずれも予想以上の成果をおさめていますが,新年度も「音楽の街」では財団法人からの助成を活用したこまえ文化フェスティバルを開催するとともに,学校への出前コンサートなどこれまで実施してきた事業の定着を図ってまいります。
 「絵手紙発祥の地」では,友好都市の川口町や小菅村などの参加をお願いしての「絵手紙サミット」開催,絵手紙サポーター事業などを推進してまいります。

 また,狛江で初めての総合型地域スポーツクラブは新年度内に設立委員会の立ち上げを目指しております。市民総合体育館は4月より指定管理に移行いたしますが,それと合わせて空調設備や暗幕改修,外壁改修など条件整備を行うとともに,国体会場の準備活動としてバレーボール審判員の養成,スポーツ振興審議会の会議回数の増も予算化いたしました。
 産業振興は活気あるまちづくりの柱です。定額給付金の支給に合わせて市内共通商品券を発行し給付金の市内消費を促すとともに,現在市商工会で準備を進めている市内全域を対象とした商店スタンプカード事業へ助成をしていきます。
 読書を推進するため児童図書推薦リストの作成を行い,そのほか国際化に向けた英語版暮らしのガイドの作成,男女平等推進プランの改定を行います。

 残された狛江の自然や歴史遺産の確保・創出に向け,古民家園において高木家の長屋門復元,荒井家主屋のカヤぶき屋根修繕を行い,一層の市民活用を図ってまいります。東野川樹林地の購入保全は新年度も継続し,22年度で買収を完了する計画です。
 学校施設の緑化については昨年より五小で校庭の芝生化を進めていますが,新年度は緑のカーテン事業の試行実施に入ります。
 多摩川の自然とその周辺の住環境を守るために,河川敷でのバーベキュー問題をどうするか「市民討議会」を市民団体からの協働提案事業として取り組みます。この討議会には無作為抽出によって選ばれた市民に参加をお願いすることになりますが,新しい市民参加の手法としても注目しているところです。

 花火大会は,現在の経済情勢にかんがみ市制施行40周年を迎える22年度の再開を目指すこととし,実施計画に盛られていた21年度の財源は緊急経済対策に活用させていただきました。新年度は,大会復活に対する市民理解と周知,協賛への要請を中心とした活動を展開し,市民ぐるみの花火大会として開催できるよう準備を進めてまいります。

 以上の市民要望実現,魅力ある狛江づくりを進めていくために引き続き行財政基盤を強化し,また新たな基本構想・基本計画,第4次行財政改革大綱の策定に入ってまいります。ここのところで報告書をいただく公共施設再編方針の具体化,20年度改定の商店街振興プランの推進や食育推進計画の作成など,計画的な市政運営に留意してまいります。
 さらに「市民のためにがんばる市役所」を目指して,職員の意識改革と能力開発,迅速・的確・親切な窓口対応に向け引き続き努力していきます。
 以上,新年度予算案と新年度の取り組みについて主な点を申し上げました。


 この数年間,三位一体の改革に対応するための行財政基盤確立のための緊急行動計画の遂行,職員定数削減に見合った体制をつくるための新組織への移行と大きな試練を乗り越えてきました。この中で市民と行政との協働が前進したことは大きな成果だと考えています。
 とりわけ地域や学校における安心・安全のための市民パトロールでは,ピークだった6年前と比べて犯罪発生件数を46%減少させることができました。
 限られた予算の中で「音楽の街−狛江」「絵手紙発祥の地−狛江」の2つの取り組みが市民,専門家と行政の連携によって市民の間に浸透・定着してまいりました。
 環境,平和,ごみの減量,福祉のネットワークなども含め多分野にわたる狛江の市民力によって,まちづくりが前進してきたことは特筆されるべきであり,そこには住民自治の町狛江を築く着実な歩みが刻み込まれているように感じます。
 小さな町のよさを生かし,思想・信条の異なる人々とも住みよいまちづくりの一点で手を携え,自立した魅力ある狛江を築くために21年度も全力を尽くしてまいります。
 議員各位におかれましては,活発な御議論を通して政策の発展と円滑な市政運営のために,一層の御理解と御協力をいただけますよう心からお願い申し上げ,所信表明といたします。