資料

宇都宮けんじさんの発言を中心に、都知事選をたたかった《人にやさしい東京をつくる会》
総括会議の報告

都知事選を確認団体としてたたかった《人にやさしい東京をつくる会》主催の「東京都知事選を振り返る集い」が1月20日、開催されました。

狛江からも数人の方が出席しました。

 以下の文書は、《人にやさしい東京をつくる会》からメールで届いた「東京都知事選を振り返る集い」の報告文書です。原文のまま掲載します。ぜひお読みください。

120日(日)、「東京都知事選を振り返る集い」を開催しました。250人の会場は満員。選挙戦を振り返り、今後の運動の発展について、4時 間にわたり大いに語りあいました。

 第1部は人にやさしい東京をつくる会代表の中山武敏、宇都宮けんじさんのお話に続き、選対本部長(上原公子)、事務局長(熊谷伸一郎)、各実務担当か
らの報告。休憩をはさんで第2部は、11月9日の出馬記者会見と14日のなかのゼロホールのキックオフ集会から新宿西口大集会まで、熱い選 挙戦を一気に振り返るビデオ映像から始まりました。各地でアイデア満載の選挙戦を繰り広げた勝手連からは16グループが活動報告。もちろん、ジョ ニーHさん、サンバ&ドラム隊も登場しました。

 宇都宮けんじさんが政策の柱として掲げたこれら4点は、ますますその重要性を増しています。
【脱原発】原発のない社会へー東京から脱原発を進めます。
【反貧困】誰もが人らしく生きられるまち、東京をつくります。
【教育再建】子どもたちのための教育を再建します。
【憲法擁護】憲法のいきる東京をめざします。
 ともに力を合わせて前に進んでいきましょう!

 以下、宇都宮さんのお話をご紹介します。
 また、当日会場で配布した「人にやさしい東京をつくる会」による都知事選についての総括文もウェブサイトで公開しています
http://utsunomiyakenji.com/
ぜひご覧ください。

 みなさん、こんにちは。遅くなりましたが、明けましておめでとうございま
す。今年もよろしくお願い致します。公職選挙法によると、「選挙戦ではたいへんお世話になりました」と言ってしまうと公選法違反になってしまうんです。でも、一緒に闘った仲間として、「たいへんお疲れさまでした」と言わせていただきます。

 1カ月間の選挙戦で、多くの方から体調は大丈夫ですか、疲れたのではといった声をかけられますが、私自身はむしろ選挙戦中に健康が快復していきました。毎日朝8時から夜7時まで、だいたい5、6カ所で街頭宣伝、その宣伝と宣伝の間は選挙カーで街中を流す、という活動をしました。選対本部から、「必
ず7時50分までには、最初の街頭演説会の駅頭まで来てくださいね」と念押しされますので、だいたい毎日5時には起きていました。毎 晩、選対との打ち合わせを終えた後、本当は一杯呑みたいところなのですが、それをぐっと我慢して家に帰り、早寝早起きを続けました。

 演説はだいたいみかん箱の上に立って行ないましたが、大きな会場では選挙
カーの屋根に立ちますので、その梯子の昇降がいい運動になり、お腹もひっこ
み、体調も良くなりました。選挙戦が終わる頃には、あと1カ月半くらいやっても大丈夫だと思ったのですが、選対本部のみなさんは疲労困憊の 方が多く(笑)。でも、たいへん充実した闘いができたと思います。

 まず政策については、脱原発、反貧困、教育行政の根本的な変換、そして憲法擁護、この4つを柱にし、これらに賛同する市民団体、労働団体、政党 等の支持を求めて、政党は日本未来の党、社民党、共産党、緑の党、みどりの風、新社会、生活者ネット、そして無所属の都議会議員の方々から支持を いただきました。

 選対事務局での作業には、毎日50人から100人のボランティアのみなさんが参加し、各地で50を超えるさまざまな形の勝手連ができました。選 挙資金もほとんどカンパで賄われました。こういった面でも、本当にみなさん、市民の方に一手に担われた選挙でした。どこへ街頭宣伝に行っても、勝 手連のみなさんが駆けつけてはビラをまき、演説に相づちを打ち、かけ声をかけと、たいへん励ましてくださいました。

 こうした街頭演説は他の候補者を圧倒していました。時々、中松候補と松沢候補とすれ違いましたが、2人ともたいへん寂しそうなんです(笑)。選 挙カーでマイクを握っていても誰もいない、演説をしている周りには誰もいないという場面を何回か見かけました。猪瀬の街頭演説もあまり盛り上がっていなかったと聞いています。

 女優の木内みどりさんが、八王子の私の演説会の後、自民党の衆院選候補が演説をするというのでこっそりのぞきにいったら、聴衆はパラパラしかいなかったそうです。だから、なぜマスコミが自民圧勝と書くのか不思議でたまらなかったと言っています。支援していた人の活動は、他を圧倒しています。

 その集大成が最終日、新宿駅西口の大集会でした。遅れて私が会場に到着したときにはすでに西口が人で溢れ、たいへんな熱気に包まれていました。私もその熱気を受けて、かなりヒートアップしてしまいました。今でもあの一体感を思い出します。17日間、ともに闘ってきた集大成だと感じまし た。

 しかし残念ながら、結果としては大差で敗北してしまいました。
 その要因はいくつか考えられますが、まずは、選挙期間が圧倒的に短かったこと、そして連合や民主党の支持を取り付けられなかったことがあげられます。連合東京は早い段階で猪瀬支持を打ち出してしまいました。

 今回は、戦後の都知事選挙で初めて、国政と同日投開票という事態になり、その結果、都政の問題は埋没し、東京にどのような問題があるのか、石原都政のどこが問題だったのかを、都民のみなさんに伝えることができませんでした。テレビの討論会もたった2回開かれただけで、短期間で私の知名度の低さを克服するのは、容易なことではありませんでした。

 それから、日本社会全体が右傾化する中での闘いであったということです。猪瀬の得票は433万票で、これは史上最多の得票数だったようですが、猪瀬を支持している自民・公明・日本維新の会の、東京の比例代表の得票合計は358万票です。これにみんなの党を加えると434万票になりますが、民主党は比例で100万票獲っているので、本来であれば、猪瀬がもっと票を獲得できたところをできていなかった。こういう見方もできます。

 民主党は2008年の衆院選挙では、都内の比例代表で180万票獲りましたので、
それから100万票を減らしているわけですが、この100万票のほとんどを日本維新の会とみんなの党がかっさらっているという構図です。

 こうした極めて不利な条件下での選挙選の中で、968960票を獲得できたということは、高く評価していいのではないかと、私個人としては思っています(拍手)。

 96万票というのは、有権者の10人に1人、実際に投票した都民の6、7人に1人に入れていただいたことになります。これだけの人が、4つの政策を掲げる宇都宮に入れたということは、これからの運動をする上で評価していいと思います。

 もう一つの成果は、さまざまな政党、労働団体、政治団体が、立場やイデオロギーを乗り越えて闘ったということです。これには大きな意味があります。とりわけ4つの政策は、これからも実現するために運動を続けていかなければならない課題ですので、つながりを保っていくことが、これからます ます重要となります。

 誕生した第2次安倍政権は、4つの政策を逆行させるような政策を打ち出しています。原発に関しては、維持・再開どころか、新たにつくると言っていますし、貧困の問題では、新年早々、生活保護水準を引き下げると言いだしています。生活保護水準の引き下げというのは、単に生活保護の問題だけでなく、労働者の最低賃金、地方税の非課税限度、就学援助や社会福祉協議会の生活副資金貸し付け制度、介護保険料等々、あらゆることに連動しており、国民生活全体の引き下げにつながる問題です。

 教育については、教育再生会議で、東京都の日の丸・君が代強制に象徴されるようなひどい教育行政を全国に展開しようとしています。そして憲法。衆院では改憲勢力が3分の1議席を獲得しましたが、夏の参院選挙の結果如何では、憲法改正が現実的な話になりかねません。これに対しても、私たちは力を合わせて闘っていかなくてはなりません。

 猪瀬都政ウォッチはたいへん重要な課題です。
 1月6日の「朝日新聞」トップに、生活保護を受けて都内に暮らす高齢者と都外の施設に暮らす都民の高齢者の数は、2009年に群馬県渋川市の「たまゆら
荘」で火災が起きて、入所者が亡くなるという痛ましい事件がありましたが、そのときの2・6倍に増えているそうです。猪瀬はケアハウスを作ると言っていますが、2013年度の予算には、こういった問題改善に対する予算がまったく組まれていませんし、2013年度の計画には、一戸の都営住宅も建設する予定はありません。そういった点をしっかりウォッチしていく必要があります。

 それから公職選挙法の問題です。都知事選に出て初めて、こんなにもバカげ
制度であるということがわかりました。告示になると、候補者である私の名前
を書いたビラが1000万人の有権者に対して30万枚しか配れません。名前を記載していないビラであれば2種類まで配ってよいということですが、あまりに人をバカにしています。それに対して、これまでずっと手が加えられずにきたというのは由々しき問題です。

 ビラの配布に関しては、支援者の一人が住居侵入罪と傷害罪で書類送検されるという事件がありました。幸い弁護団の活躍で拘留は却下され、釈放されていますが、こういった弾圧もありました。

 もう1点、供託金の問題です。ある都民から、私は参議院選挙に出ようと思っているのだが、それには小選挙区で300万円、比例では600万円の供託金が必要である。これは憲法違反ではないか、そういう裁判をやってほしいという要請がありました。アメリカやフランス、ドイツでは、供託金はほとんどゼロ円です。フランスは1995年まで2万円だったそうですが、それでも問題だということでなくなった。イギリスも10万円以下です。

 つまり、お金のない市民が運動をして、その延長線上で政治に関与しようとしたら、お金というハードルがある。市民運動をやる人というのは基本的に貧乏人が多い。そういう人が政党を作ったり、立候補しようとすることに大きな歯止めをかけているのが供託金です。

 実は公選法が改正されるたびに、供託金の額は値上がりしています。こんな非民主主義的な制度であるのに、弁護士は1票格差の問題では違憲訴訟で争っていても、自らが選挙に立候補するということについては想定してこなかったので、たいして問題にしてこなかった。これからは大いに問題として取り上げていく必要があると思います。

 残念ながら当選しませんでしたので、これからは、一都民、一市民、一弁護士として、みなさんと一緒に、このつながりを大切にやっていきたいと思いま
す。これからも、どうぞよろしくお願い致します。(拍手)