2017年に110年ぶりに刑法の性犯罪規定が改正されました。「強姦罪」から「強制性交等罪」への名称変更や親による18歳未満の児童への性交を条件なしで罰する「看護者性交等罪」の新設など大きく改正されました。男性も被害者になりうるようになり、刑が「3年以上」から「5年以上」に引き上げられて性犯罪の規定が変わりました。また起訴するのに被害者の告訴が必要な「親告罪」が撤廃され、被害届だけでいいようになりました。
しかし、肝心なことが残されました。「暴行」や「脅迫」が要件とされ、その程度も抵抗を著しく困難にする程度の暴行や脅迫でなければならないとされているため、性犯罪と認定されるハードルはとても高いままです。「いやだ」と言っても、強い暴行や脅迫がない限り、意に反する性行為であっても不処罰でいいという規定は手つかずのままになっています。裁判官や警察が「抵抗できたのではないか」などと、被害者に責任を負わせる運用がまかり通ってきました。
被害者の声、社会動かす
性暴力の根絶を求めるフラワーデモは、昨年3月の4つの強制・準強制性交等罪をめぐる裁判で無罪判決が相次いだことをきっかけに、全国に広がり、回を重ねるごとに新たな参加者が増え続けています。狛江でも新日本婦人の会有志の呼びかけで、毎月11日に狛江駅で花を手にアピールを行っています。
また昨年12月18日に元TBS記者による伊藤詩織さんへの性暴力事件について東京地裁は民事裁判で伊藤さん勝利の判決を出しました。また今年2月には酔った女性への性的暴行が無罪となった地裁判決が福岡高裁で逆転有罪判決が下されるなど、今、世論と運動が社会を動かし始めています。
刑法見直し急いで
今年は2017年の刑法改正の見直しの年です。今年3月法務省は「性犯罪に関する刑事法検討会」を設置。性暴力被害の当事者が初めて委員に選任され、子供や性的少数者などの性被害の実態のヒアリングを実施しました。
法改正に向けた「論点整理(案)」には現行の強制性交等罪の成立要件である「暴行・脅迫要件」の「撤廃」、「不同意性交の処罰化」が明記されるなど、当事者たちの長年の悲願が盛り込まれました。
性暴力のない世界を共に
狛江市議会にも「性犯罪に関わる刑法改正を求める陳情書」(市内に住む「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止関東ネットワーク」会員・徳永恭子氏提出)が提出され、7月29日の総務文教常任委員会で全会一致で採択されました。6月議会では自民・公明・三宅議員が採決に反対しましたが、今回は陳情採択に賛成しました。8月31日の本会議で採択されれば、狛江市議会名で国に意見書が送付されます。
陳情事項は(1)強制性交等罪における暴行・脅迫要件等を撤廃し相手からの「不同意」のみを要件として性犯罪が成立するよう改正すること。(2)性交同意年齢を引き上げること。(3)地位関係性を利用した罰則規定を拡大すること。(4)公訴時効を撤廃もしくは停止すること。の4項目です。
性暴力は重大な人権侵害であり、生涯癒えることのない傷を負わせます。性行為は強制されるものでなく、本人同士の「性的同意」を必要とする法整備の流れが世界で広がっています。その中で日本は大変立ち遅れています。「刑法の中に、戦前以来の家父長制の権力構造の仕組みが放置されてきたことが問題」との指摘もあります。「日本の女性の人権を国際水準に」するにふさわしい性教育や関係者への研修も合わせて要求していきましょう。
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