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特別寄稿                                 
7月15日付け「警察による特殊詐欺防止のための訪問を行います。」の広報について
大原 学
 8月19日の東京新聞の武蔵野版(24面)に、「苦情受け狛江市回収 - ニセ電話詐欺対策 警察に情報」の記事が掲載されました。この記事によると、狛江市は市民から苦情が寄せられたため、調布警察署に提供していた1万1千世帯の個人情報を、8月13日に調布警察署から情報を回収したとのことです。

経過

7月15日付けの狛江市広報に、「警察による特殊詐欺防止のための訪問を行います。」とのお知らせが突然掲載されました。これは市が住民基本台帳を検索して60歳以上のみの個人情報(住所・氏名・生年月日・性別)のリストを作り、調布警察署に提供して、特殊詐欺に関する注意喚起等の啓発活動を行うというものです。対象者は1万1千世帯で、対象者数は2万2924名にものぼる膨大なデータです。このリストはこの広報が出る前の7月7日にすでに調布警察署に提供されていますが、庁議で報告されたのは個人情報を提供した翌日の7月8日とのことです。狛江市はこのリストの提出前に、『個人情報を調布警察署に提供しても良い』との了解を対象者から取っていませんでした。

個人データは本人に確認後提供して欲しい。

今回の個人データの提供は、住民基本台帳データの「目的外利用及び外部提供」にあたります。矢野前市政時代の個人情報に対する対応は、災害時などで援助が必要な高齢者や障がい者等の場合の個人情報は、事前に本人の意思を確認し、『個人情報を提供しても良い』と了解が得られた方のみのリストを、警察・消防・町会などに提供することになっていました。今回、高橋市政では、そのような特別な援助を必要としていない市民の個人情報を、対象個人の了解もなく外部提出しています。この広報の内容に疑問を持った市民から、「個人データは本人に確認後提供して欲しい。」、「個人データをリストから外して欲しい」との苦情が増えたため、今回の「回収」に至りました。現在市は「提供するリストをあらためて検討する」と説明していますが、再度提出する前に、本人の了解を取ってから提出して欲しいと思います。

おざなりな個人情報保護審議会の審議

狛江市個人情報保護条例には「目的外利用及び外部提供」の例外規定(第11条)があります。今回はその例外規定の中の、「実施機関が(個人情報保護)審議会の意見を聴いて職務執行上必要があると認めたとき」 を根拠に、個人情報を警察署へ提供したわけですが、この審議会では、市が広報を使って周知することのリスク (詐欺集団がこれを幸いと活動を開始し、詐欺被害を増やしてしまう可能性、個人情報データの漏洩のリスク等)や、この事業が特殊詐欺事件を防止できるかどうかの評価などは何も検討されていません。また、事業全体の概要(警察署の署員か外部委託か、何名で訪問するのか、期間はどれぐらいかかるのか等)が明確にわからないまま、市の提案を「了承」してしまっています。このような、おざなりな個人情報保護審議会の審議では狛江市民の個人情報保護は確保できないと思います。
「個人データをリストから外して欲しい」場合は安心・安全課へ連絡を!

市は、7月28日に『町会・自治会員の皆様へ 〜調布警察署が高齢者宅に個別訪問して特殊詐欺防止に向けた啓発活動を行います〜 平成26年7月』という文書を出しました。その中に、「※訪問をお受けになりたくない方は、お手数ですが下記担当までご連絡ください。」があります。本来ならこのような文書は、対象者全員に送付すべきですが、市はそれを実施する考えはないようです。個人データをリストから削除して欲しい場合は下記に電話連絡するか、市役所の安心・安全課を訪ねて申し入れてください。なお、対象は60歳以上のみの世帯ですので、ご注意ください。


資料

狛江市個人情報保護条例より抜粋

(目的)
第1条 この条例は,個人情報の保護及び適正な取扱いについて必要な事項を定め,市の実施機関が保有する個人情報の開示請求等の権利を保障し,もって市民の基本的人権を擁護することを目的とする。

(実施機関の責務)
第3条 実施機関は,個人情報の収集,管理及び利用するに当たっては,市民の基本的人権を尊重し,個人情報の保護に努めなければならない。
2 実施機関の任命権者は,個人情報について適切に管理するとともにその所属職員に対して,教育・研修を行い,指導及び監督に努めなければならない。
3 実施機関の職員は,その職務上知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ,又は不当な目的に使用してはならない。その職を退いた後も同様とする。
(市民の責務)
第4条 市民は,相互に基本的人権を尊重し,個人情報の保護に努めなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は,その事業の実施に当たって,個人情報の重要性を認識し,個人情報に係る市民の基本的人権の侵害を防止するための保護措置を講ずるよう努めなければならない。
(目的外利用及び外部提供の制限)
第11条 実施機関は,個人情報を第7条第2項第1号又は第8条第1項第2号に規定する利用の目的の範囲を超えて利用(以下「目的外利用」という。)し,又は当該実施機関以外の者に提供(以下「外部提供」という。)してはならない。
2 実施機関は,前項の規定にかかわらず,次の各号のいずれかに該当する場合は,目的外利用又は外部提供(以下「目的外利用等」という。)をすることができる。
(1) あらかじめ本人の同意があるとき。
(2) 法令に特別の定めがあるとき。
(3) 市民の生命,身体又は財産の安全を守るため,緊急かつやむを得ないと認められるとき。

(4) 前3号に定めるもののほか,実施機関が審議会の意見を聴いて職務執行上必要があると認めたとき。

3 実施機関は,前項第3号の規定により目的外利用等をしたときは,その旨を本人に通知しなければならない。
4 実施機関は,第2項各号の規定により目的外利用等をしたときは,規則で定める事項を記録しておかなければならない。

(中止の請求)
第25条 市民は,実施機関が第11条第1項及び第2項の規定によらないで自己に関する個人情報の目的外利用等をし,又はしようとしていると認めるときは,当該実施機関に対し,当該個人情報の目的外利用等の中止を求めることができる。この場合,第22条から前条までの規定を準用して行い,この場合,「訂正」とあるのは「中止」と読み替えるものとする。
2 実施機関は,前項の規定により中止の請求があったときは第24条第1項の規定による決定をするまでの間に,当該個人情報の目的外利用等を一時停止しなければならない。ただし,一時停止によって実施機関の公正な職務執行に著しい支障を生ずるときは,この限りでない。
3 実施機関は,前項ただし書の規定により一時停止をしなかったときは,狛江市個人情報保護審議会(第32条第1項を除き以下「審議会」という。)に対し,その事実を速やかに報告しなければならない。

(狛江市個人情報保護審議会)
第32条 この条例による個人情報保護制度に関する必要な事項を審議し,制度運営上の重要事項を建議するため,市長の諮問機関として,狛江市個人情報保護審議会を置く。
2 審議会は,次の各号に掲げる事項を審議する。
(1) この条例によりその権限に属することとされた事項に関すること。
(2) 電子計算処理等の運用に係る基本的事項に関すること。
(3) 前2号に定めるもののほか,審議会に諮ることが適当と認められる事項に関すること。
3 審議会は,個人情報の保護に関する重要事項について,実施機関に意見を述べることができる。
4 審議会は,次に掲げる委員7人をもって組織し,市長が委嘱又は任命する。
(1) 市民      4人
(2) 学識経験者   2人
(3) 市職員     1人
5 前項の委員の任期は2年とし,再任を妨げない。ただし,補欠委員の任期は,前任者の残任期間とする。
6 委員は,職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も,同様とする。
7 前各項に定めるもののほか,審議会の組織及び運営に関し必要な事項は,規則で定める。


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