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特別寄稿                                 

市役所駐車場有料化問題を考える


重国 毅
市民に相談なく、市役所・市民センター利用者に負担増
  市役所駐車場の有料化が、3月1日の「広報こまえ」で突然発表され、3月23日から実施されています。市役所駐車場で「タイムズ24株式会社」が有料駐車場経営をおこなう(利用料収入は、市への一定の貸付料支払いをのぞき業者の収入となる)というもので、通常料金は付近の駐車場と同程度に設定され、日中(8〜21時)30分200円、夜間(21〜8時)60分100円です。市役所(市民センターふくむ)来庁者は1時間まで無料ですが、以降15分ごとに100円の駐車料金がかかることになります。これにともない、市民センター裏の駐車場は庁用車専用となり、市民は使えなくなりました。
 たとえば、市民センターで2時間の催しをおこなうために車で荷物を運び、2時間30分駐車する場合、600円の駐車料金が必要になります。市役所の窓口が混雑していて待たされたり、事務処理の遅れで思わぬ時間がかかったり、複数の相談や手続きに1時間以上かかったりした場合も、駐車料金がかかることになります。
市民からは、「なぜ有料化なのか」「市役所や市民センターの利用では時間にかかわらず無料にしてほしい」などの声が出されています。なお、障害者、市主催事業・会議への参加者は無料とされています。
 また、今回の有料化によって、料金さえ支払えば24時間いつでも誰でも駐車場が使えることになります。確定申告の時期や悪天候時などはただでさえ満車状態が多いのに、来庁者以外の車が増えれば、市役所に用事がある市民が不便をきたすことは明らかです。
 そもそも市役所や市民センターの駐車場は、その利用者のために設置されたものです。納税や現況届など義務的な手続きも多いのに、そのための駐車に費用徴収することにも疑問があります。
 なぜいまこうした有料化なのでしょうか。それは、市民の利益にかなうものなのでしょうか。考えてみたいと思います。

実施までの経過
 市役所駐車場有料化は、「狛江市第4次行財政改革推進計画」(平成10〜14年度)以降「公共施設駐車場等の有料化の検討」として検討課題とされていましたが、これが高橋市政になり途中改定された第5次計画(13〜15年度)で「市施設駐車場の適正管理と庁用車のあり方の見直し」として、民間業者貸し付け方式での有料化が打ち出されました。
 有料化の理由としては、@市役所(市民センターふくむ)利用者以外の目的外駐車の抑制、A限られた市役所駐車スペース(30台分のみ)の長時間利用の抑制、B市財産の有効活用などが理由としてあげられてきました。市役所駐車場設備の老朽化対策ともあいまって、設備更新から管理運営までを一体的に民間業者に委託するという手法(当面の初期投資を抑えられるとの理由→ただし3月におこなわれた工事を見ると、ゲート、発券機、看板がとりかえられた程度でそんなに大きな費用がかかっているとは思えない)がとられ、事業者が利益を見込める料金設定を認めるとともに、事業者は基本貸付料と利用実績に連動させた従量貸付料を納める(残りは事業者の利益)こととしています。
 12年3月に民主党の太田議員が市議会で有料化推進の立場から議会で取り上げ、13年5月に民間の時間貸し業者による利用状況調査実施、14年9月に市が駐車場利用者などにアンケート調査を実施し、9月の市議会で自民党の谷田部議員が有料化推進を求める質問をおこなっています。そうしたもとで、今回の市役所駐車場有料化は実施されました。

 

市民への説明なし
 しかし、市民への負担を求める施策であるにもかかわらず、市民にたいする説明は一切なされていません。広報も「有料時間貸駐車場がオープンします」と、まるで施策が前進したかのようなお知らせです。
 市担当課は、3月13日現在で、事業者との契約内容についての市民からの問い合わせに、「議会で審議中であり明らかにできない」(議会最終日は3月26日)としつつ、同17日から工事実施、同23日から有料時間貸駐車場として運営開始されたことも、議会軽視、市民軽視といわなければなりません。
 市役所駐車場有料化は、市民が利用する施設にかんする重要な変更です。幾分かのメリットもあるかもしれませんが、先にあげたようなデメリットもあります。事業者に丸投げですませられることではありません。市民の声をよく聞いてすすめるのが当然の行政の責任です。
 その点で、14年9月に駐車場利用者などにたいしてアンケート調査をおこないながら、結果がいまだ公開されていないことも問題です(3月13日現在)。アンケートは適切におこなわれたのか、またその結果がどう反映されたのか、あきらかにされなければなりません。
 市民参加での審議会や公式なパブリックコメントがなされるべきだったのではないでしょうか。高橋市長による市民不在、トップダウンによる一方的な市政運営の姿がここでも見られます。

見直し・検証が求められる点
 ・なぜ市役所・市民センター利用者も一時間を超える場合は有料なのでしょうか。障害者は無料とされていますが、高齢者や足の不自由な方など、障害認定を受けていなくても車での移動に頼らざるを得ないかたも少なくなく、これからさらに増えていくことが予想されます。こうした方たちが市役所を利用するさいにも一時間を超えたからといって機械的に駐車料金を徴収することが行政の在り方として適切といえるでしょうか。
 国分寺市では、来庁者は時間を問わず無料です(来庁舎以外の利用30分150円)。同じく「株式会社タイムズ24」による駐車場経営がおこなわれている町田市でも来庁者は駐車時間を問わず、庁舎での用事が終わった後に確認を受け、駐車券無料化の処理がなされます(市役所利用以外の一般利用は終日60分300円)。国立市は無料です。「市役所・市民センター利用者は時間にかかわらず無料」にすべきではないでしょうか

・目的外使用を抑制することや、市役所・市民センターが閉じている時間について有料駐車場として貸し出し、市が収入を得ること自体は市民の立場からしても否定されるものではありません。しかし、駐車場貸付収入として予算計上されているのは、年間60万円にすぎません。市担当課は、市民の問い合わせに対し収入見込みを月10万円程度としており、基本貸付料が月5万円、売り上げに応じて支払う従量貸付料が?万円という見込みなのでしょうか。これにたいして、事業者の利益はどれくらいが見込まれているのでしょうか。そうした検証は議会をふくめ、市民の前にはなんらあきらかにされていません。こうした事態のまま、市の施設を使った企業の営利事業のために、本来の市役所・市民センター利用者が不便になり、負担増となるのでは本末転倒です。

 ・市役所や市民センターの駐車場は、その利用者のために設置されたものです。役所・市民センター以外の利用者の駐車によって本来の利用者が駐車できなくなる事態が生じることは避けなければなりません。有料化事業実施にともなって庁用車の削減をおこない、市民の駐車可能台数が増やすとされていましたが、実際には市民センター裏のスペースが移動しただけで、市民の駐車スペースが増えたとは見受けられません。39台という限られた駐車スペースであり、市役所・市民センター利用者が優先して駐車できるようにする対応がもとめられます。
 
・有料化推進の理由の一つとされた「長時間利用の抑制」についても、市民的議論が欠かせません。限られた駐車場スペースのために「長時間利用」を控えてもらうよう、市民に呼びかけることは必要です。しかし、納税や福祉窓口での相談などで長引くこともありますし、市民センターの利用や議会の傍聴など、そもそも施設利用が一定の長時間になるケースもあります。こうした場合をどう考えるのかは、やはり市民的議論による、市民的合意のうえですすめられるべき問題です。市役所駐車場は、本来の利用が優先されるべきものであり、お金を払えばいくらでも駐車してかまわないとか、一律に料金を課すことによって長時間利用を抑制することがふさわしいものでもありません。市民の財産を市民が有効に活用するにあたって、どのようなルールによること望ましいのか、市民的議論が前提とされるべきです。

・高橋市政は、この市役所駐車場有料化、公立保育所の民営化などを「行財政改革」と称して、市民の意見を十分に聞くことなく強引にすすめています。直面する財政負担からだけ見れば、一時的なメリットがあるかもしれませんが、長期的に見てどうなのか(質の低下、長期的な負担増がないのか)、また、自治体本来の役割である「住民の福祉の増進」を前進させるものなのかどうか(市民の暮らし・福祉、自由な活動の発展、市民参加などの視点から見てどうなのか)など、しっかりとチェックしていくことが欠かせません。

市民センター(公民館)は、「地域住民にとってもっとも身近な学習拠点というだけでなく、交流の場として重要な役割を果たす」(文部科学省)施設です。市役所や市民センターが利用しにくくなることは、住民福祉の後退であると同時に、市民の行政参加に逆行するものにほかなりません。これが、市民不在、トップダウンの高橋市政のもとでおこなわれたことも重大です。