今年は中学校の教科書採択の年です。狛江の教科書採択では、展示会場で提出された市民の意見も参考意見として扱われます。沢山の意見を届けましょう。
狛江市の採択に向けての日程
市民向け展示会
期間 6月19日(金)〜7月2日(木)
場所 市役所ロビー、西河原公民館、教育研究所
場所によって開館日、開館時間が異なります。6月1日付広報こまえで確認してください。
採択のための教育委員会 8月7日(金) 午前9時から 市役所特別会議室
どんなことを書く?
教科書を選ぶのは先生方
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教科書を選ぶのは実際に子どもたちとともに教科書を使う現場の先生方の大切な役割です。ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」でも先生の意見が最も尊重それなければならない、としていてそれが世界の常識です。
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今回採択にかかる中学校教科書は15科目、129冊もあります。これを教育委員さんがすべて検討して選ぶということはできるわけがありません。それぞれ専門の先生方が検討することが必要です。ぜひ現場の先生方の意見を最優先にしてください。
各社の内容について ― 社会科 歴史・公民 ―
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「つくる会」の自由社は今回「公民」は改訂もせず2011年版のままです。「歴史」は改訂検定に出しましたが一度は不合格になり再提出で何とか合格にこぎ着けました。これまでも実際に供給された教科書でも間違いや盗用が多いと指摘されていたのにまだこのような状態というのは教科書発行者としての資質に欠けるのではないでしょうか。しかもその改訂のなかで「南京事件」についての注もなくして本文の「南京を占領した」だけにしてしまいました。特集ページで触れていた沖縄戦における「集団自決」もなくし、逆に本文に「日本軍はよく戦い、沖縄住民もよく協力した」を入れました。どちらも戦争の実態、悲惨さを覆い隠すものになっています。とても子どもたちに学ばせたいものとはいえません。
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「つくる会」から分裂して勢力を伸ばしている育鵬社「歴史」はあまり大きな変更をせず着実に採択数を稼ごうという考えのようですが「新しい日本の歴史」というタイトルもそのままなのは自国中心の独りよがりの本質も変えていないということでしょう。中学の歴史は世界史分野も含むもので他社で「日本の」と限定しているものはありません。
「韓国併合」「アジア太平洋戦争(大東亜戦争という用語を使っている)」では人々に与えた被害にはあまり触れず、近代化を進めたとか、独立への期待を抱かせたとかきれい事が強調されています。戦争中の国民生活についても国民がだまされていたことは書かずに「国民の多くはひたすら日本の勝利を願い、励まし合って苦しい生活に耐え続けました」と一致協力の美談に仕立て上げています。神話の時代から昭和天皇まで天皇大好きも大きな特徴です。
各章末に「なでしこ日本史」というページを設けていますが、人選は「献身的だった」という例が目立ち、適切な人物についても説明に問題があります。
1.推古天皇、光明皇后、紫式部 2.静御前、北条政子、日野富子 3.高台院、春日局、加賀千代女 4.天璋院、津田梅子、樋口一葉 5.クーデンホーフ光子、平塚らいてう、与謝野晶子
育鵬社でさらに問題なのは「公民」の方です。憲法の「平和主義」の項目のあとに「平和主義と防衛」という項目を新設して「国防という自衛隊本来の任務をじゅうぶんに果たすためには現在の法律ではむずかしいといった問題点も指摘されました」という記述を入れて、まだ国会での議論も始まっていない自衛隊の海外派兵を先取りした書き方です。安倍政権の「戦争する国」のための教科書のように思えます。それに続く項目は「憲法改正のしくみ」で外国の憲法改正の回数の表などものせて改憲に誘導しようという感じがします。
原子力発電ではわざわざ核融合発電への期待を入れて原子力へのこだわりを捨てていません。
■新しく参入した学び舎の内容
実際に中学の先生の経験者が中心になって今回「歴史」の教科書を新しく発行しました。はじめてのことではあり、文科省が狙っているのとは方向性の違う教科書なので一度は不合格にされたのを修正して再提出して何とか合格しました。
・「従軍慰安婦」のことも金学順さんの証言を入れるなどして復活させようとしましたがそのままでは認められず、それでもお詫びの「河野談話」を資料に載せるところまでは認められました。一つ風穴が開いたか、という感じはします。
・ 女性の扱い方も生き生きしているように感じます。たとえば「米騒動」では見出しが「始まりは女一揆―米騒動と民衆運動」となっています。「少女たちの労働争議」というコラムもあります。幕末の大阪での打ちこわしも西宮の女性たちが米の安売りを求めて店に押しかけたことから始まったと書いています。戦争中のことでもアンネだけでなくオードリー・ヘップバーンのことも扱っています。
・ 子どもの扱いも積極的で具体性があります。マララさんも扱っていますがノーベル賞受賞者ということではなくよりよい未来を願う子どもたちの一人という扱いもよいと思います。「浮浪児とよばれてー当時14歳の少年の話」というコラムもあります。
・年表が写真入りで楽しくイメージがわきながら見られます。
■社会科のすべての教科書について
社会科については改悪された検定基準と検定審査要綱によって政府見解を強要された、あるいは自主的に対応したかで領土問題が歴史・地理・公民すべての教科書で扱われることになりました。しかも日本の主張が強調されて、相手国の見解は扱われていないようです。相手国との関係は一層厳しくなるのではないかと心配です。
■社会科以外については今までのところ現物を目にすることができていません。展示場で現物を見てそれぞれ関心のある分野についてご意見を書いていただければと思います。
教科書は子どもたちの成長のための心の面での主食です。子どもたちが世界の中でなかよく平和に生きて行けるように、大切な9条を含む平和憲法の精神に沿った、楽しく学べる教科書が選ばれるようにたくさんの声を届けましょう。
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