危険な水道道路改善は市政の緊要課題

第2回「市政まなび塾」の概要報告

高橋市長のとんでもない「感違い」も明らかに

 《豊かな会》の付属機関として設置した「市民派市政こまえ研究所(こまえ市政研)」が開催する「市政まなび塾」の第2回目は、「水道道路」問題をとり上げました。

■日時 4月9日()午後7時〜9時半頃

■会場 当会事務所(みんなの広場)

■課題 「どうする?危険な水道道路」

△都市計画、狛江市マスタープラン、東京都の整備計画の内容

    △矢野市政でのとりくみ、高橋市長の「勘違い」

    △市民本位での問題解決の方向性

 以下、12人の皆さんが参加して熱心に学びあった第2回「市政まなび塾」の概要を報告します。(文責=絹山)

人命事故も多発している水道道路

 次頁に掲載した調布警察署が発行したビラをご覧ください。平成18年度、つまり2006年度に水道道路で3人もの方が亡くなっています。危険な水道道路の改善は、市民の生命を守るべき市政にとって第一級の課題となっています。

 狛江市議会も2007年3月、都道である「水道道路の歩道の拡幅など交通安全対策の強化を求める意見書」を全会一致で採択し、都知事あてに提出しました。

 その中で、「水道道路は幅員約8メートルで、両側の歩道はそれぞれ約1メートルと大変狭く、とても自転車が通れる状況にはない。また車道も車線の幅員が片側約3メートルであり、自動車と自転車が交錯して走っている状況である。」と指摘し、次の2点の実現を求めました。

@水道道路(調布都市計画道路3・4・2号線)について、歩道の拡幅など都市計画道路としての整備を促進すること。

A自動車の速度規制の徹底など交通安全対策を強化すること。

 その後、都により歩道上の電柱の民地への移設や段差縮小がおこなわれましたが、「自動車と自転車が交錯して走っている状況」や車椅子が通れない歩道は改善されずにあります。



矢野市政における都市計画道路政策

 次頁の地図をご覧ください。「調3.4.2」などの番号が付いている路線が都市計画道路です。昭和37年、つまり1962年ですから、安保闘争から2年後、今から50年も前に決定された計画です。

中には、例えば「調3.4.2」号線、狛江通りから多摩川住宅に向かう路線ですが、その必要性が理解できないものもあります。また、現在は道路もない住宅街を突き抜ける路線も多くあり、「あと百年経っても完成なんかしないよ」との参加者の声もありました。

 以前、ある都市計画家の話を聞きましたが、23区の都市計画道路は大体1,000メートル間隔のメッシュ(網の目)だが、狛江は500メートル程度であり、過密すぎるとのことです。理由はよく解からないそうでした。

 さて、矢野市政はもちろん、都市計画道路のすべて否定する立場には立たない、必要性を仕分けして整備を進める方針をとりました。

 矢野市政最終年の昨年3月に改定された都市計画マスタープラン(都市計画法第18条の2に基づく、今後20年間の都市計画の方向性を定めたもの)では、次のようになっています。

◆道路種別の整備の方針

1)都市間幹線道路

狛江市を通過する交通を処理し、都市間を結ぶ広域的な幹線道路として調343

(世田谷通り)を位置づけます。

整備済み 狛江市内の全区間が開通しているため、その機能を確実に果たすように適切に維持・管理を図る。(東京都への要望)

2)主要幹線道路及び補助幹線道路

狛江市内と隣接区市とを連絡する幹線道路として調3・4・18(狛江通り)などを「主要幹線道路」、また、主要幹線道路を補完する道路を「補助幹線道路」に位置づけます。

幹線道路の連続性を確保するために、既に整備済みの路線の延伸に注力するとともに、未着手の路線の事業化を推進します。

狛江市全体が結びつくような幹線道路網を構成し、特に市南東部の交通利便性の向上と活性化を図る観点から、調3・4・16 の整備済み区間(公園通り・一中通り)から調3・4・2(水道道路)との交差部までの優先的な整備を推進するとともに、調342(水道道路)の拡幅整備を東京都に要請します。

歩きやすいまちづくりの実現に向けて、歩道のバリアフリー化やバスの停留所などの環境整備を推進します。また、新たに整備を行う際は、自転車走行空間の整備を検討します。




矢野市政の16年間、とりくんできた都市計画道路の整備事業は次のようになります。

◇調3・4・18号線 狛江通り(都道11)

 都施工により「緑野小前」交差点から国領方面への整備が進展している。

◇調3・4・4号線 本町通り(都道11)

 都施工により完成。矢野市長就任時にはすでに事業化され、90%以上の用地が買収済みであった。

◇調3・4・17号線 松原通り(都道114)

 都施工により今春に完成。

◇調3・4・16号線 一中通り

 石井市政時代に、「市民グランド前」交差点付近から西側部分は完成していた。ここから東部分、「電力研究所西」交差点までの約200メートルを完了。また、小田急線高架下の七差路部分を施工中である。いずれも着手から5年間ほどかかり、経費も約5億円、約3.6億円の負担となっている。道路整備には多くのお金と時間を要する。

◇調3・4・23号線 慈恵東通り

 事業中。OKストアーの扱いが課題として残っている。

 

 

都の「第三次計画」から外されるか?の危惧

 

 東京都は、「多摩地域における都市計画道路の第二次事業化計画」(平成8年度〜平成17年度)を策定しており、水道道路もこの計画に載っていましたが、結局のところ「事業化」には至りませんでした。

 計画期限切れを前に、第三次事業化計画の策定作業に入った都・都市整備局は2005年8月、その「中間まとめ」を公表しましたが、水道道路は対象から外れていました。

 

 狛江市は、危険な水道道路の改善を実現すべく、矢野市長を先頭に都の所管部署である都市整備局や技監(技術職のトップで副知事級とのこと)などへの働きかけを強めました。

当時、矢野市長が都との交渉に臨んだとき、第三次事業化計画の目的に、道路の広域ネットワーク形成が掲げられていることに着目し、電力中央研究所前から「二の橋」交差点を経て水道道路に至るまでの調3・4・16号線(狛江市施行)との接続によって、調布方面と川崎、世田谷方面との広域ネットワーク化が図られることを強調し、最終段階で水道道路を第三次事業化計画に盛り込ませたものです。その際、双方がそれぞれの施行主体が事業化に努めることを確認したのですが、都ではその後、道路特定財源が一般財源化されて道路財源の確保が難しくなったことを理由に、現在まで事業化が実現できていません

 次頁掲載の文書は、矢野市長名で都知事に提出したものですが、交通ネットワーク形成と防災が強調されています。

第三次事業化計画の策定作業をおこなっていた都・都市整備局は、今後10年間(平成1827年度)で優先的に整備すべき路線に選定するために四つの「評価項目」を設定しました。

@交通混雑の緩和と走行性の向上

A物流を支える道路網の形成や都市間の連携強化

B防災機能の強化

Cまちづくりへの貢献等

──です。

 @とCは、都市計画道路である以上、どの計画路線であろうが、その必要性がなければ、そもそも計画決定自体がおかしくなる項目です。したがって、矢野市政がAとBを強調し、調3・4・16号線と水道道路(調3・4・2号線)の接続によって、調布方面と川崎、世田谷方面との広域ネットワーク化、そして南部地域の防災機能の強化を前面に出して、都の所管部署への働きかけを強めたことは正しい選択だったといえます。

 

 こうして、「多摩地域における都市計画道路の整備方針〔第三次事業化計画〕」が策定され、2006年度から2015年度(あと2年!)までに「優先的に整備すべき路線」(完成または着手)として、狛江市では次の3路線が採択されました。

◇調3・4・23号線(慈恵東通りのOXストアー前付近)

 市施工、幅員16メートル

◇調3・4・16号線(一中通りの「電力中央研究所前」交差点から「二の橋」交差点で世田谷通りを越え、水道道路まで) 

市施工、延長約1.6キロメートル、幅員16メートル 

調3・4・2号線(水道道路のうち世田谷通りから調3・4・16号線まで) 都施工、延長約1.3キロメートル、幅員16メートル 

 

 

切実な水道道路整備がなかなか進まない

 

都の第三次事業化計画で、優先整備路線としてなんとか残った水道道路ですが、計画期間の2015年度まであと2年になった現在でも事業着手にも至っていません。国が道路特定財源の一般財源化をおこない、道路整備財源の確保が難しくなったことを理由にしています。

いっぽう、狛江市を管轄するのは都建設局・北多摩南部建設事務所ですが、同所が市内で進めてきた3箇所の道路工事のうち2箇所(調3・4・17号線 松原通り(都道114)、調3・4・4号線 本町通り(都道11))が完了し、残りは調3・4・18号線 狛江通り(都道11)だけとなりましたので、水道道路整備の事業化のチャンスだ、との意見も参加者からありました。また、第三次事業化計画期間中に事業化されないまま終わると、第四次事業化計画で外される危険性を指摘する意見もありました。

対して狛江市は、財政が厳しい中でも調16号線の整備を進め、2008年度から年間で約3億6千万円をかけ、危険な岩戸北七差路の改良を進めてきました。矢野市長は昨年、七差路整備がようやく目途がついたことから、その先の調16号線整備について所管部に検討を指示したところで、任期を終了しました。

 

 

矢野市政攻撃第一の高橋市長は「勘違い」?

 

 高橋市長は、選挙戦の時から一貫して、「水道道路整備の遅れは矢野市長のせい」旨の言説を繰り返してきました。

 

 例えば、昨年12月の定例市議会。鈴木えつお議員の質問に答えて、

 

◇これまで東京都のいろいろな方,現役,OB含めてですけど20数名から伺った話を集約すると,市道の総延長の120分の1しか毎年予算化もされず,120年に1度しか整備されないという非常識な道路予算しか予算化されていない状況の中では市で施工すべき道路の整備はほとんど期待できない。現に一中通りから南下していく調布都市計画道路3・4・16号線の事業化路線であるにもかかわらず遅々として整備が進んでいない。また和泉多摩川通りから水道道路で交差する部分についても整備は未来永劫期待できない。したがって関連する道路の整備が進まない以上水道道路を早急に整備する理由に乏しいから,そうした理由から水道道路の整備がおくれていたという事情を東京都の関係者から取材した結果わかったということでございます。

◇つまり都道と市道のネットワークによってまちづくりが進んでいくわけでありまして,ただ単に都道だけの整備では意味がないから市が施工すべき3・4・16号線についてもちゃんと整備が進んでいかないと。要するに都道だけを整備したって意味がないという,それは当たり前の議論でありまして常識論であります。そういった部分について市の役割を果たさないで,つまり3・4・16号線をちゃんとやっていくから水道道路も整備してくださいという言い方ならわかりますけれども,ずっとこのところ私が当選するまでの間に続けてきた市の要望書というのは水道道路の対策を進めてください一本やりで,3・4・16号線について,約束していた3・4・16号線の整備について,どういうふうにしていくということは一言も言っていないわけで,それでは東京都との信頼関係が壊れるのは当たり前だと思います。

 

──などという具合で、先述のとおり確認してきた矢野市政のもとでの狛江市のとりくみを知らないのか、あるいは意図的に切り捨てているのか、「勘違い」ではすまない問題です。

 

 「勘違い」?の究めつけが『広報こまえ』昨年1015日号の「市長コラム4」です。その全文は以下のとおりです。

私の重点施策の一つに水道道路の安全対策があります。この水道道路は、都道ですが、かつて、市が整備を都との間で約束していた調布都市計画道路3・4・16号線整備事業(和泉多摩川通り側から水道道路方面への整備)を途中で止めていたために都に動いてもらえませんでした。現在、都との信頼関係を再構築中であり、水道道路の整備は都による説明会の開始から見えてくることになるでしょう。
 また、この道路に必要な、信号機の新設や移設について関係官署と協議を始めており、もうしばらくすると市民の皆さんと協働して、具体的な道筋をつけていけることになると思います。
 京王線の地下化はすでに完了しており、田中橋から世田谷通りまでの調布都市計画道路3・4・17号線も12月1日に全線開通することなどから狛江市の道路環境は大きく変わります。
 これまで長期間、毎年度、市道の総延長の120分の1の整備分しか予算化されず120年経たないと同じ箇所の整備ができないと言われていた道路整備事業については、中長期的な道路修繕計画を策定中であり、凹凸の目立つ道路を計画的に修復していくことにしています。また、17年間行われることのなかった全市的な交通量調査もまもなく開始します。
 こうして、一つひとつの施策を積み重ねていくことで道路に関しても、安心で安全なまちづくりを進めていきます。

 

 高橋市長の言う「和泉多摩川通り側から水道道路方面への整備」などは、市と都との協議でもまったく話題になっていないことで、そのことを広報紙で堂々と述べるとは無知をさらすものです。そして、この初歩的な間違いを今もって訂正していないというのも驚きです。

 

 昨年12月の定例市議会で、鈴木えつお議員が高橋市長に対して、「和泉多摩川通り側から水道道路方面への整備」を都と約束した事実があるのか?旨を質問しましたが、「常識的に考えてわかる話をわかりやすくしただけの話」などと逃げてしまいました。業を煮やした?鈴木議員が、松本・建設環境部長に同じ質問を投げると、次のように答えました。

 

基本的には今の和泉多摩川通りから水道道路方面への整備というのは,今までの議会等の中で質疑等されておりません。ただ,今市長が言いましたように,市長として東京都に確認したということの中で,そういう条件もあったという確認をしたんだと思います。
 それで具体的には3・4・16号線というのは当時連続立体交差事業で一部今とまっているわけです。その再建のスケジュールというものが具体的になっていなかったと。マスタープランの中でもなっていないということで,そういうものも含めてネットワークの中で東京都のほうとしてはそういう検討も条件の中に入れたんだと思うんです。ルートとして3・4・16号線というのは全体を市の循環道路として,そういう位置づけはありますので,将来的にはそういうものもやっていかなきゃいけないという位置づけはあるかと思います。東京都は条件の中でネットワーク化の中で検討したんだと思います。

 

 これも煮え切らない答弁ですが、松本部長も今まで「和泉多摩川通り側から水道道路方面への整備」を都と約束したなどいうことは(事実無根だから当然ですが)知らなかったことは確かです。

 

 

それにしても、水道道路整備は緊要な課題

 

高橋市長は、昨年の市長選挙公報で「4年間でやります」と銘打って、「水道道路は歩道を広げ、…安全を確保します」と市民に約束しました。しかし、先に見てきたとおり、道路整備には多くのお金と時間を要します。調3・4・16号線(一中通りの「電力中央研究所前」交差点から「二の橋」交差点で世田谷通りを越え、水道道路まで)には、現在は道路のない住宅地も多く含まれています。調3・4・2号線(水道道路のうち世田谷通りから調3・4・16号線まで)にしても、現在の幅員を2倍にする計画であり、多くの沿道住民の将来生活に大きな影響を与えます。誰が考えても「4年間でやります」なんてことは無理なことです。それを気軽に?選挙公報に書いてしまうというのは、わたしの理解の範囲を超えています。

3月の定例市議会で鈴木えつお議員が、この公約実現の明言を高橋市長に迫りましたが、「東京都の事業として促進を助ける立場」とか、「関与できる立場ではありません。要請する立場であります。」などと、もう逃げをうっています。

それにしても、危険な水道道路の改善は、市民の生命を守るべき狛江市政にとって第一級の課題となっています。その実施にあたっては、当然ながら、影響を受ける関係住民はもちろん、市民の全体の合意と納得を得ることが前提となります。

わたし達《豊かな会》も昨年の市長選公約で、「危険な水道道路の安全対策を進めるとともに、拡幅整備が早期に実現するよう東京都に引き続き要請します。」と市民に約束しました。その実現に向けて、活動を強める必要があります。