昨年3月の東日本大震災では甚大な被害が発生し、全国にも深刻な影響を与えました。国は23年度、東日本震災復興のため第4次補正まで行いましたが、「平成24年度予算の基本方針」でも震災復興が重点となっており、昨年12月発表の「平成24年度地方財政への対策の概要」においても、通常収支分と震災分を区分し整理しています。
この中で通常収支分としての一般財源総額は、前年度比1,251億円、0.2%の微増で、中期財政フレームに基づき、23年度と同水準が確保されました。年少扶養控除の廃止などから、地方税及び地方譲与税は全体として1.0%の増が見込まれていますが、固定資産税の評価替えにより市町村税としては0.5%の減となっています。また、臨時財政対策債は0.4%の減としていますが、市町村税が減少することから市町村分は0.2%の増であり、人口基礎方式から財源不足額基礎方式への移行により、交付団体においてはこれ以上の増が予測されます。高齢社会の進展により介護保険、後期高齢者医療特別会計への繰出金の増加が見込まれ、さらに生活保護受給者数は昨年11月時点で207万人強と過去最多になるなど、市町村の財政負担は増加傾向にあり、一層の歳出削減が求められています。子どものための手当では国と地方の費用負担を2対1とされ、年少扶養控除の廃止による増収分に対して、地方特例交付金や国庫補助金が見直されるなど、地方財政は引続き厳しい状況にあります。
狛江市の22年度決算では、これまでの職員数削減などの取組みや一般財源収入の増により経常収支比率が91.1%と大幅に改善し、19年度決算から始まった健全化判断比率も着実に向上しています。しかし23年度決算では、一般財源収入の減や社会保障関係費の増などにより悪化が見込まれ、さらに景気の低迷を考慮したとき、財政基盤強化の手を緩めることはできません。24年度は行財政改革推進計画の見直し年度でもあり、引続き全庁挙げて行財政改革に取り組んでまいります。
それでは新年度予算案の概要について、説明申し上げます。数字は概算となりますが、特別会計を含めた予算総額は406億6,000万円、0.1%の増で、そのうち一般会計予算は245億7,800万円、前年度比6億5,800万円で2.6%の減となりました。
一般会計の歳入では、市税が前年度比で1億3,400万円の減額ですが、主に固定資産税の評価替えによるものです。地方譲与税や利子割交付金など税連動交付金は増減がありますが、差引き3,100万円の増となりました。地方交付税は17億9,100万円、前年度比7.9%の増を見込んでおります。国庫支出金は、子ども手当の制度改正や道路事業に伴う補助金等によって4億2,900万円減額となり、都支出金2億7,000万円の増額は主に保育所緊急整備事業補助金によるものです。繰入金では、駒井保育園改築工事や庁舎耐震改修及び増築工事で公共施設整備基金を、上和泉地域センター改修工事で公共施設修繕基金を、それぞれ活用しました。市債5億900万円の減額は、教育債3億9,700万円、民生債2億6,000万円、土木債1億4,400万円の減、総務債3億5,400万円の増が主な要因です。
歳出では、総務費が5.9%の増ですが、庁舎耐震改修及び増築工事によるものです。民生費の3.1%の増は、駒井保育園改築工事や新設保育園整備事業が主な要因です。衛生費は、大腸がん検診と前立腺がん検診の増額がありますが、多摩川衛生組合負担金の減額で1.9%の減となりました。農業費については、都市農業パワーアップ事業費補助金の増額や新たに体験農園補助金を創設したため40.5%増となっています。土木費は、市道32号線や市道34号線の整備事業減額などにより19.2%、教育費は元和泉テニスコート用地取得終了などのため17.4%の、いずれも減となりました。公債費は3.8%の減でございます。
次に、平成24年度予算案の主な事業、新年度に予定している主な取組み等について、説明申し上げます。この予算編成にあたっては、限られた財源の中、財政調整基金に頼らない収支均衡型財政の維持を念頭に、編成方針で示した5つの重点課題の具体化を図るとともに、20年市長選挙で掲げた「6つのビジョン」の実現を軸に作業しております。また東日本大震災をはじめこの1年間の政治・社会の動向や狛江市政の発展段階で生じた新たな課題を念頭におきながら、的確に対応していくことに留意しました。
それでは、24年度の狛江市の取組みを紹介いたします。
まずは、昨年1月に掲げた「東京一安全な都市−狛江」の実現へ、市民がその目標を共有し、また前進していることを実感できるような事業展開に努めました。特に東日本大震災を踏まえ、震災対策に総額12億円余を投入いたしましたが、その象徴として、庁舎耐震改修の中で防災センターを建設することとし、新年度から3年計画で完工します。いざという時、直ちに災害対策本部が行動できるようになるとともに、市役所の基幹系システムをここに移設することによって、災害後でも業務の継続を可能にするものです。同時に深井戸を設置し、緊急時の飲料水確保を図ります。また防災行政無線が、都市化で一部聞こえづらくなったため、防災行政無線の内容を電話で確認できる自動応答装置を導入します。三中・四中の校舎耐震等改修、駒井保育園の改築工事を年次計画に沿って実施しますが、学校施設はこれで耐震化を全て完了し、保育園は今後4年以内に改修等が終わります。小・中学校や保育園などに災害時緊急連絡用としてPHSの配備、備蓄用倉庫の修繕、防災用貯水槽の設置など、きめ細かな対策も講じています。災害時、支援の必要な方がたのために、要援護者避難支援プラン策定調査及び支援情報システム運営支援のための予算を計上しました。また市管理下にある橋りょう10か所の長寿命化計画を策定する他、市民向けに、市消防団員による普通救命講習やスタントマンを活用した交通安全教室の開催など、安全意識の高揚に努め、都制度による緊急輸送道路沿道の建築物耐震化を促進します。
新年度は、平和都市宣言30周年にあたりますので、戦争のない平和な社会をめざす決意を込めて記念事業を市民協働で実施いたします。
続いて「子育て一番のまち」を目指す取組みを説明いたします。
保育園では計画的に耐震化・老朽化対策を進めています。今年度の藤塚保育園に続き新年度は駒井保育園改築工事、そして駄倉保育園耐震改修・増築工事実施設計を行うとともに、家庭福祉員増員と合わせ受入定数を拡大し、また狛江駅南口の旧自転車撤去保管場所に認可保育園を誘致・新設することによって、待機児ゼロを目指してまいります。放課後の児童の居場所づくりとして、3か所目の放課後クラブを和泉小学校に開設し、上和泉学童保育所の改修に入ります。また災害時の緊急対応も視野に入れ、保育園にインターネット環境を整備します。
学校施設では、耐震化とともに、市内全小・中学校普通教室への空調設備の設置を完了し、老朽化が進んでいる三小・二中の管理諸室・特別教室空調設備の更新設計を行います。その他、五小の屋上防水等工事、六小の外壁・サッシ等改修、四中体育倉庫の改築も実施します。これまで中学校給食は市外業者の施設で調理していましたが、衛生管理の向上、環境配慮や食育などに応えられる施設とするため、七小跡地に給食センターの新築を決め、24年度から実施設計を行います。
またソフト面においては、若い世代の子育てを支援するため、子育て世代に市内の協賛店で割引等の特典が受けられるカードを交付する子育て応援事業を始めるほか、「赤ちゃんが来た」「子育てメッセ」など子育て事業を充実し、昨年開設した子育てサイトには「おでかけマップ」や「育ちの森サイト」を構築します。要保護児童対策として「トリプルP」事業を立ち上げ、子どもたちの悩みを受け付ける民間のチャイルドライン事業への補助も始めます。ファミリーサポートセンターでの病後児保育実施のための準備、幼稚園に対する巡回員の時間増を行い、さらに、放課後の全児童対策であるフリープレイについて、六小、和泉小でも3季休業中の開設をしますが、これで全校が実施することになります。
学校教育においては、これまで進めてきた少人数授業をさらに推進するため、講師配置時間を2割増やすとともに、不登校やいじめの防止、良好な人間関係の構築に資することを目的とした「Q−Uアンケート」事業を早稲田大学との協働で拡充してまいります。そのほかICT化の促進、音楽鑑賞教室の充実、食育に関する研修会や講演会の開催、武道の本格導入に伴い柔道指導の体制を整備します。
青少年育成委員会での新たな広報紙の発行、中高生フェスティバルの運営委託、青少年会議で要望の強かった中学校対抗戦の実施など、青少年の健全育成とまちづくりへの参加を願って、予算計上をしています。
第3次基本構想の将来都市像「私たちがつくる水と緑のまち」の実現に向けて、環境に配慮したまちづくりを進めてまいります。今年度、東京農業大学、市民との協働事業として緑の実態調査を行いましたが、新年度はこの成果を活かしながら「緑の基本計画」を改定します。また、計画段階から市民参加で設計をまとめてきた清水川跡地の緑道は、工事に着手をいたします。
環境に配慮した公共施設づくりを進めていますが、新年度は五小に続いて六小でも校庭の芝生化を進め、「緑のカーテン」を六小・和泉小・一中に設置します。市庁舎耐震改修や保育園改修などにおいても、緑化や再生エネルギーの導入に努めます。
原子力発電に頼らないエネルギー政策を促進しようと、太陽光発電並びに太陽熱利用の装置設置に対する助成を復活させるとともに、市施設の電力供給契約を入札によって実施し、特定規模電気事業者(PPS)の参入を促します。また庁用車に電気自動車を試行的に導入し、地域においても都の環境対応型特定施策商店街補助事業を活用し、街路灯はLED等に積極的に切替えていきます。
4月から「多摩川河川敷の環境を保全する条例」を施行しますが、監視・指導のための人員を配置し、バーベキュー等禁止の周知とその徹底を図ってまいります。
誰もが健康で安心して住み続けられる狛江を築くため、新規に大腸がん検診を一定年齢の節目ごとに通知したうえで実施するとともに、特定健康診査の際、前立腺がんの検診も行い、受診率の向上に努めてまいります。子育て世代を対象とした食育推進事業として離乳食教室を年3回開催します。あいとぴあ健康まつりでの健康相談が好評ですが、市役所でも同様の健康相談を開設し、また保健師の増員など、相談の充実を図ります。
市では、本議会に狛江市福祉基本条例改正を上程していますが、これはバリアフリーからユニバーサルデザインの考え方に転換させるものです。それに対応し公共施設は改修時に誰もが使いやすい施設へと改善しておりますが、24年度は市民センターで多目的トイレ等改修、上和泉地域センターでエレベーターの改修などを行います。民間施設でもユニバーサルデザイン化を促進するため、基本条例に沿って福祉環境を整備する場合、50万円を限度に工事費を補助することといたしました。
障がいのある方がたの自立と社会参加を願って、地域自立支援協議会による社会資源マップの作成に加え、介護者に対する送迎用車両のガソリン費助成、知的障がい者生活寮(ケアホーム)の新設、障がい者通所施設等の法定移行に伴い、財源不足となった場合の補てん、さらには虐待に対する障がい者の保護室を確保します。
高齢世代に対しては、今年度、市内3つ目の特別養護老人ホームを七小跡地に建設するための法人選定を行い、「孤独死ゼロ」を願って始めた「あんしん見守りサービス」では利用者数を拡大いたします。ここで第5期介護保険事業計画が始まりますが、昨年来サービス給付費が急増していることから、第5期計画期間中の介護保険料基準額は現行の月額3,950円から4,971円になる見込みでした。しかし高齢者の経済状況を勘案し、給付費準備基金から2億7,800万円を投入して引上げ幅を圧縮し、基準額を4,500円に設定いたしました。また、第3段階を分割し低所得者層の負担軽減に努めております。
平成25年の東京多摩国体会場となる市民総合体育館では、年次計画で大規模改修を進めてきましたが、新年度は体育室の床・照明の改修工事に入ります。また借地だった自転車置場の返還に伴い敷地内に新たな駐輪場を設置いたします。今年度から実施される啓発イベント「スポーツGOMI拾い大会」は新年度も継続するとともに、リハーサル大会開催に必要な経費も合わせて計上しました。そのほかスポーツ分野では、市民グランドを改修するための実施設計費、新築した二中プールの地域開放経費も盛り込みました。
昨年発見された猪方小川塚古墳については土地の取得予算を計上し、市制施行50周年を視野に入れた新市史編纂事業もいよいよ始まります。市ではこれを契機に、歴史的公文書管理制度を構築し、文書保存期間経過後も歴史的な価値がある行政文書等を保存することにしました。これまで延べ25万人近くが利用している市立古民家園では主屋座敷等を修繕し、市指定文化財としての説明板を泉龍寺とともに設置します。
昨年、狛江市観光協会が組織再編を行い、新たな一歩を踏み出しましたが、今後多摩川貸しボートの活用、多摩川いかだレースへの支援・連携などを進めるため、補助金を増額しております。
文化面では、「音楽の街−狛江」の発信拠点エコルマホールの天井耐震補強及び舞台設備等を修繕し、「絵手紙発祥の地」事業では、長岡市川口地域との「ふるさと交流25周年記念」を兼ねて絵手紙教室を川口地域で開催いたします。また「絵手紙」包装紙を作成し商店で購入・活用していただくことになりました。公民館では新たに親子囲碁教室、イクメン事業、木育事業を実施し、図書館では4日間の祝日開館を試行的に行います。
産業振興では、市内空店舗情報をホームページで紹介することに伴い、創業支援の融資あっ旋総額も拡大しております。隔年で元気わくわく事業を実施していますが、24年度はランチをテーマに行います。住環境整備とともに建設関連業種の仕事起こしとなる住宅改修資金助成は新年度も継続し、就職活動の支援セミナーも時間増を図ります。
農業分野では、農業経営改善計画及び都市農業経営パワーアップ事業への補助を継続し、また市民に農業を身近に感じてもらおうと、西野川に創設される55区画の体験農園に対し助成することとしました。
都市基盤の根幹となる道路について、3・4・16号線七差路整備では用地取得を、市道34号線では整備工事を継続し、3・4・4号線並びに市道32号線の歩道を整備します。市道11号線では、岩戸児童センター付近での道路維持工事と一の橋通りの歩行者安全対策として路側帯カラー舗装を行います。また、市民提案を活かした小金橋南交差点の改良工事に向けて用地取得をいたします。
市民活動の拠点となる地域センターは一部老朽化が進んでおり、公共施設再編方針に基づき、上和泉地域センター改修、南部地域センター改修工事設計、岩戸地域センター改築基本設計の各予算を計上し、谷戸橋地区センターでは多目的室の防音対策を講じます。
以上、予算案を中心に新年度の主な事業を申し上げました。他に「市民のためにがんばる市役所」づくりでも、市民の利便性向上のために、税のコンビニ収納、MPN口座振替サービス、自動交付機発行の住民票等に対する手数料の4月からの引下げ等の準備を進めています。市民の皆様から信頼が寄せられるよう、的確・親切・迅速な接遇に努め、まちづくりでの市民とのパートナーシップ確立へ、全力を尽くしてまいります。
狛江市ではこの間、「三位一体の改革」による市財政の危機を市民の理解と職員のがんばりで打開してきました。その後も467人体制の定着や新しい課題への対応に努めてまいりましたが、これらを助走期間として、新年度はさらに高い段階へ市政を止揚させる時期となっています。前述の福祉基本条例改正の他に、まちづくりの土台である市民の参加と協働ではこれまでの到達点に基づき、基本条例の改正作業を進めています。また「東京一安全な都市−狛江」の実現に向けて、この理念や推進体制を明らかにした、おそらく全国で最初の安心安全に関する総合的な基本条例を6月議会に上程する予定です。
今、基本条例だけでなく、新年度だけでも環境基本計画、緑の基本計画、まちづくり条例、地域防災計画等の改正作業やその準備に入ります。本予算案の遂行とこうした新たな仕組みづくりは「東京一安全な都市」「自立した魅力ある都市」「子育て一番のまち」あるいは「住民自治のまち」へさらに接近させていくものです。「協創」を通じたこれらの挑戦が、狛江の市政運営やまちづくりを大きく飛躍させることになると確信しています。
議員各位におかれましては、住み良いまちづくり、市民福祉向上のために、それぞれのお立場から一層ご尽力のほどお願い申し上げ、新年度の所信表明といたします。